研究課題/領域番号 |
26285179
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
坪井 由実 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (50115664)
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研究分担者 |
木岡 一明 名城大学, 大学・学校づくり研究科, 教授 (10186182)
勝野 正章 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10285512)
渡部 昭男 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20158611)
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20581721)
中嶋 哲彦 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40221444)
石井 拓児 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60345874)
窪田 眞二 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (80170033)
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324987)
中山 弘之 愛知教育大学, 教職大学院, 准教授 (80335017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育委員会制度 / 教育ガバナンス / 地方教育行政法 / 共同統治 / 地方教育行政組織 / 学習環境調査 / 学校風土 / 学校協議会 |
研究実績の概要 |
(1)2015年5月、『地方教育行政法の改定と教育ガバナンス―教育委員会制度のあり方と「共同統治」』を出版した。7月には神戸大学にて合評会を行った。特に、諸階層・諸利益の「分裂」を直視したとき、共同統治の概念と実践は、これらの地域住民をどう組み込んでいくのかが今後の課題として提起された。 (2)X県A町教育委員会と本科研との研究協力協定に基づき、まず、7月に学習環境調査(予備調査)をA町内の5つの小中学校の協力を得て実施した。児童生徒597名、保護者450名、教職員99名、学校運営協議会委員42名から回答を得た。分析方法は因子分析と構造方程式モデリングを用い、9月のA町における読み解き会を経て、10月には日本教育行政学会で研究成果を発表した。因子間の因果関係について、例えば児童生徒調査では、「市民性」「親の来校」「教師努力」が児童生徒の「学習効果」に影響を与えていることが明らかになった。 (3)7月18-19日には、第4回の合宿研究会を開催し、法的基礎理論グループからは、新自由主義的構造改革とガバナンス改革との関係について研究成果が発表された。国民国家は民主主義と基本的人権尊重にその正統性の根拠を置くため、国民国家のガバメントはこれらの制約から逃れることはできないため、意思決定の基準と仕組みを市場経済的合理性に置き換える必要がある。結局、ガバナンス改革は、民主主義と基本的人権尊重の論理が働くガバメントから、経済的合理性の追求を行為規範とするガバナンスへの移行を意味するとの知見が示された。 (4)10月14-16日、ソウル大学にて開催された第16回教育研究国際会議のシンポジウム「東アジアにおける現代教育政策」に3名が出席した。総括討議では、共同統治の可能性について、特に韓国の学校協議会にかかわって問題提起をした。また、滞在中、韓国の学校協議会のメンバーたちと懇談する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)学習環境調査においては、3つの自治体で実施する計画であったが、実際には1つの自治体の全面的協力により予備調査と分析を行うにとどまった。27年度は研究倫理審査を受け承認を得る過程で、本調査では調査への協力が保護者等への強制にならない手続きを整え準備するのに相当の時間を要した。 (2)「共同統治」概念を深め、共通に理解していく努力を、書評会や合宿研究会で続けてきた。こうしたなかで、「共同統治」は、新しい教育委員会制度の運営の実践的概念として有効概念たりうるか問うべきだとする意見も出てきている。いかなるロジックで4者が結びつくのか、いかに共同統治下の教育の良さを評価するのか、またその評価が共有されていくのか。また、「共同統治」概念には、対話・寛容・正義等、「強い主体」としての資質、属性が想定されがちで、「共同」を共有しづらい人々に配慮、対応した理論化、概念化が必要である。さらに、「選択」「評価」を希求する立場を排除することなく、どのように概念を構築していくのか。共同統治概念における公共性は、権利性や共同性のみから創生するわけではなく、「選択」「評価」をも組み込んでとらえる必要があるのではないか。このように、共同統治概念をめぐる論点が漸く整理されてきている段階であり、これを法的基礎理論グループや国際比較研究グループで、理論的にも実践的にも深めていく課題の追究は28年度に持ち越されている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)3つの自治体の小中学校において、学習環境調査の本調査を、27年度の予備調査を踏まえて実施する。そして、学習環境調査票を完成させ、調査手法の普遍化の作業に取り組み、より広く多くの自治体で類似の調査が可能になるようにする。 (2)日本教育行政学会第51回大会(於大阪大学)にて、研究成果を常任理事会主催の特別企画のなかで発表する(10月7日)。3回目になる今回は、特に共同統治をめざし学校づくりをすすめている教職員と保護者の発表者を含めて実施する。 (3)研究成果報告書を作成する(28年3月)。その打ち合わせを、7月16-17日に名古屋で実施する。主な内容構成は以下の通りである。 ①法的基礎理論グループの研究成果論文では、わが国に固有な教育統治構造の歴史的・文化的特性を明らかにする。改正地方教育行政法を憲法・教育基本法との接続関係のなかに再構成し、これによって教育における国民主権の統治形態を法的諸形式のなかに定義・表現することを試みる。 ②基礎自治体調査開発グループの研究成果論文では、新しい教育委員会制度のもとで、自治体における教育(学校)と教育行政の相互作用関係がどのように変容してきているのか明らかにする。また学習環境調査により保護者住民と教職員それに教育行政との相互理解に基づく共同による学校改善の可能性について探究する。 ③国際比較研究グループの研究成果論文では、各国の地方教育行政制度と学校協議会(学校理事会、学校会議など類似の機関・組織を含む)の機能分担状況および協働的関係性について類型的に分析・検討しまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学習環境調査票を作成するための予備調査はできたが、本調査までできなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、学習環境調査票作りに向けた本調査を計画的に実施する予定である。
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