研究課題/領域番号 |
26285181
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
荒井 明夫 大東文化大学, 文学部, 教授 (60232005)
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研究分担者 |
大矢 一人 藤女子大学, 文学部, 教授 (10213878)
軽部 勝一郎 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (30441893)
三木 一司 近畿大学九州短期大学, その他部局等, 教授 (60304705)
宮坂 朋幸 大阪商業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90461954)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 就学 / 督責 / 地域 / 学校 / 地域名望家 |
研究実績の概要 |
本研究は、1870年代の「就学勧奨」政策から、1880年代に主流となる「就学督責」政策への転換を視点にして、日本近代公教育形成過程における「就学構造」を解明することが目的である。本年度の目的は、1880(明治13)年第二次教育令に基づく「就学督責規則」の悉皆調査とその分析にあった。現在までの調査で全道府県で調査を実施し、福島県と沖縄県以外の全道府県で「就学督責規則」を収集した。 今年度は、福島県・沖縄県の調査を継続しつつも、収集した「就学督責規則」を府県横断的に分析をすすめた。まず第一に、文部省が発した「就学督責規則起草心得」と各府県の「就学督責規則」を比較し条文数・発行日などを横断的に分析した。その結果、各府県で最も大きな相違点となったのは、「家庭教育」「巡回授業」に関する条文であることがわかった。そこで第二に、「巡回授業」に焦点を当て、山口県の事例を調査した。第三に、「就学督責」に違反した場合の「処分」に着目したことである。いくつかの府県には、「就学督責規則」に違反した場合、刑法の違警罪を適応させる県があるなど教育行政と内務行政の関係性を問うことができる例も存在している。さらに最も特徴的な「就学督責規則」を発した青森県の事例を集中的に調査分析した。その中で、民衆の日常的な生活と学校に行くことの関係が矛盾したとらえ方をしているなど注目する史料も発見できた。 このように、横断的研究と事例研究を重ねており、その成果は、2018年度の教育史学会大会にてコロキウムを開催し成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、福島県と沖縄県を除く全道府県の「就学督責規則」の収集に成功したこと。 第二に、文部省による「就学督責規則起草心得」と各府県の発した「就学督責規則」を横断的に比較し、条文数・発行日・内容等の分析に成功したこと。 第三に、その結果、とくに著しい相違性として「巡回授業」にあることに着目したこと。その事例として顕著な相違性のみられる山口県を事例研究として設定し調査・分析を深めていること。 第四に、「就学督責規則」に違反した場合の刑法の「違警罪」にあたる府県を数件発見し、「督責」と刑法との関係を追求していること、などにある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の課題は次のとおりである。 第一に、文部省の「就学督責規則起草心得」と収集した各道府県「就学督責規則」の比較考察をすすめること。第二に、各道府県「就学督責規則」の、条文数・発行日・内容に関係する横断的比較考察をさらにすすめること。第三に、昨年度までの比較考察において特徴のみられる「巡回授業」「家庭教育」に関する条文の考察をすすめ、特徴的な府県に対する事例分析を強化すること。第四に、「就学督責規則」に違反した場合の「処分」について、刑法の違警罪に問うとしている府県の事例研究を強化すること。である。 なお、平成29年度は最終年度である。これまでの研究成果を、教育史学会大会においてコロキウムを開催して公表し、研究成果報告書としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、沖縄県の「就学督責規則」収集について現地調査を実施しても発見できる可能性がほぼ無いことが内地調査で判明した点。同県の「就学督責規則」は国会図書館等で調査を重ね多様な現地機関に問い合わせた結果ほぼ存在しないと結論付けた。そのため調査旅費が未使用となった。第二に、購入すべき図書予算が下回ったためである。第三に、いくつかの府県を重点地域調査として設定したが、現地調査以前の文献調査段階で重点地域指定を解除したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
第一に、引き続き福島県については調査を継続し、就学督責規則」発見のため調査を実施する。第二に、今年度は最終年度となるために、横断研究を重ね、特定の事例研究の府県に重点的に調査を実施する。第三に、研究調査報告書を刊行する。
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