研究課題/領域番号 |
26285193
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
角替 弘規 桐蔭横浜大学, スポーツ健康科学部, 教授 (10298292)
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研究分担者 |
清水 睦美 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70349827)
児島 明 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90366956)
額賀 美紗子 和光大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60586361)
三浦 綾希子 中京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90720615)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多文化教育 / ニューカマー / 第二世代 |
研究実績の概要 |
本研究はニューカマー第二世代の社会適応に焦点を当て、かれらの義務教育後のライフコースを描き出し、ニューカマー第二世代がいかなる資源を蓄積し、またそれらをどのように活用しているのかを明らかにするものである。 本年度はフィリピン、ベトナム、ペルーにルーツを持つ10代後半から30代前半の女性25名に対してインタビュー調査を実施した。特に女性の場合、男性よりも家族役割などにおいて期待されるものが大きいと考えられることから、①親世代との関係、②親世代からの文化継承、③親世代の人的資本と編入様式が第二世代女性の文化継承と地位達成に与える影響、の3点について考察した。 ①に関してフィリピン系は「母娘」関係がもっとも強く、母親に対する「敬意と思いやり」がみられ、娘は母親をロールモデルとしていた。ペルー系では「親の権威の維持」をベースとした母娘関係がみられ、家事役割もそれらに基づいて引き受けられていた。ベトナム系では第二世代の方が日本社会への適応が早く、役割逆転が観察された。②について文化継承が最も弱かったのは役割逆転がみられたベトナム系であった。ペルー系では親世代との意志疎通ができる程度の言語継承がみられたが、家族役割の引き受け方については親世代の婚姻関係のあり方が影響を与えていた。フィリピン系は最も強く文化継承がみられたがその継承あり方には継承拒否・選択的継承・包括的継承の3パターンを見出した。③についてフィリピン系では文化継承のパターンにより学業達成に違いがみられた。ペルー系では親世代の人的資本と第二世代本人の社会関係資本のあり方で学業達成が異なっていた。 さらに本研究グループでは上記調査に追加して特にフィリピン系ニューカマー第二世代を対象とした調査も実施した。本年度はフィリピン系ニューカマー第二世代のエスニックな自己呈示のあり方とその変容についてライフコースの視点から解明を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の研究実施計画では研究調査を①義務教育段階対象者追跡調査と②ニューカマー第二世代の家族編成に関する実態調査の2層で進めつつ、ベトナム系ニューカマーを対象とした調査においてはイギリス・オーストラリアにおける現地調査を予定していた。 このうち①および②については、東京都内、神奈川県大和市及び川崎市在住者を中心に約30名のインタビュー調査を実施した。また、特にフィリピン系ニューカマーについてはより多くの調査協力者と接触できる機会を得たため、かれらのエスニシティに関わる自己呈示に関する調査研究を進めた。それらの成果については日本教育社会学会第67回大会において研究発表を行ったものである。 当初予定していたイギリスおよびオーストラリアにおける第二世代の調査については実施することはできなかった。海外現地調査の実施については今後実施の可能性も含めて再検討する必要があると認識している。 一方で、日本教育社会学会における研究発表終了後、関西地域におけるニューカマー第二世代についても研究調査を実施する必要があるとの認識を得、神戸市の外国人支援団体の協力も得られたことから、関西地域におけるニューカマー第二世代インタビュー調査を開始した。これについては来年度以降も引き続き実施し、データの蓄積を図りたいと考えている。 以上のことから、達成度については「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。 尚、インタビュー調査の実施と平行して、インタビュー調査の実施報告を中心とした研究会を原則隔月で開催し、調査データの共有を図りつつ検討を重ねた。さらに理論枠組みを構築するための基礎理論に関する研究会もおおむね3ヶ月に1回程度開催した。前者の研究会については来年度以降も継続して実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策 平成26・27年度の成果に基づきそれらの課題を整理し、当初の研究実施計画に修正を加えながら研究を推進する。基本的には昨年度までと同様、①義務教育段階対象者追跡調査と②ニューカマー第二世代の家族編成に関する実態調査の二層で展開する。 ①義務教育段階対象者追跡調査については、10月頃までを念頭に4月以降30~40件程度のインタビュー調査を実施する。調査対象者の地域は神奈川県大和市および愛知県名古屋市を念頭に置いているが、今年度明らかになった課題に基づいて、調査対象地域を拡大して調査を実施する予定である。特に関東地域と関西地域の比較を念頭に関西地域での調査実施を検討する。 ②ニューカマー第二世代の家族編成の実態調査についても、今年度に引き続きエスニシティ間比較を念頭にインタビュー調査を、①の調査と並行して展開する。具体的には中国系、フィリピン系、インドシナ系、南米系を対象に調査を計画し、各グループについて新規に10件程度のインタビュー調査を実施したいと考えている。 上記①および②のインタビュー調査の結果については日本教育社会学会第68回大会において発表することを予定し手いる。 尚、平成28年度も原則隔月で研究会を開催し、メンバー間での調査結果の共有を図るとともに、研究全体の統括を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度中に予定していた南米系及びカンボジア・ベトナム系のニューカマー第二世代に対するインタビュー実施件数が当初見込みよりも下回ったため、インタビュー調査反訳費等に係る経費に余剰が生じた。また年度当初予定していたイギリスおよびオーストラリアにおける現地調査を実施しなかったため旅費等にかかる経費に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された次年度使用額は改めて平成28年度におけるインタビュー調査の実施に充当する予定である。また、関西地域におけるインタビュー実施のための旅費等の経費に充当する予定である。
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