研究課題/領域番号 |
26285206
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
井上 真理子 独立行政法人森林総合研究所, 多摩森林科学園, 主任研究員 (30414478)
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研究分担者 |
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 教授 (00231150)
光田 靖 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30414494)
大住 克博 鳥取大学, 農学部, 教授 (60353611)
大谷 忠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80314615)
大石 康彦 独立行政法人森林総合研究所, 多摩森林科学園, グループ長 (80353605)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 森林・林業教育 / 専門教育 / 高校 / 教育内容 / 学習指導要領 |
研究実績の概要 |
高等学校の専門教育では、教科「農業」の「主として環境創造と素材生産に関する分野の科目」として、森林・林業専門科目(「森林科学」、「森林経営」、「林産物利用」)が設定されている。森林・林業教育には、地球環境問題に対応した木質バイオマス資源の有効活用や環境保全の役割や林業の再生を担う人材育成が求められている。こうした新たな役割に対応して、専門教育としての教育内容や習得すべき技術の検討が求められる。 本研究では、森林・林業教育に必要な教育内容と習得基準を提案するため、戦後の専門高校における森林・林業教育の内容についての学習指導要領および教科書の内容分析を行った(学習指導要領は文部科学省により8回改訂)。森林・林業専門科目は最大10科目(1970年)あるが、本年度は、「森林科学」育林分野(科目名「森林生産」、「育林」、「森林科学」)教科書7種類(昭和33年~平成25年)について、教育内容の変遷を整理した。該当科目の教科書は、昭和50年代後半から文部省(現、文部科学省)著作教科書となっている。 「森林科学」育林分野の目標を見ると、学習指導要領では、木材の生産や育林に関する知識や技術の習得と能力や態度の育成(昭和27年~平成元年)だったが、次第に森林の保全に関する知識や技術へ(平成元年~21年)と変化していた。教育内容には、概論、森林生態、森林の育成、人間社会と森林の4項目が一貫して見られたが、具体的な内容を見ると、技術に関する記載は減ってきていた。科目「森林経営」の教育内容の変遷と比較すると、教育内容の項目(「森林経営」では概論、測樹、経営、林政)は戦後一貫しているが、技術に関する記載が減ってきている点に共通性が見られた。専門教育の位置づけが、専門分野への就職から将来のスペシャリストの育成に変化した学習指導要領の改訂(平成11年)を受け、育林分野の教育にも変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高等学校の森林・林業教育の教育内容について検討するために、科目「森林科学」の育林分野の内容について、戦後に発行された「学習指導要領」と該当科目の教科書を対象に分析を行い、科目「森林経営」の内容と比較を行っており、研究は計画通り概ね順調に進展している。 科目「森林科学」(学習指導要領平成21年改訂版)は、学習指導要領(平成元年)改訂の際に、科目「育林」と科目「林業土木」が合併してできた科目で、大学の専門教育の内容と比較すると、育林分野(森林生態、土壌、育種、育林、森林保護)と、林業土木分野(水文、砂防、林業土木、林業機械)に分けられるため、本年度は育林分野の分析を行った。結果は、戦後一貫した教育内容(4項目)が見られ、科目「森林経営」(教育内容4項目)の結果と共通性が見られ、森林・林業教育の変化を捉えられた。 あわせて、習得基準を検討するため、中学校の教科(技術)に関する教育内容の整理方法(日本産業技術教育学会)を整理し、専門高校教員への聞き取りを行うなど、専門高校で教育実態の調査を行っており、研究は計画通り概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高校の森林・林業教育科目の内容の検討として、科目「森林経営」の教育内容について、中学校技術分野の習得基準を参考に試行的に整理するとともに、他2科目の教育内容の分析もあわせて実施する。 科目「森林経営」関連科目の内容分析として、戦後の教科書の内容の変遷を整理した結果と,大学教育の内容や専門書などの内容を踏まえて、高校段階で必要な教育内容および習得すべき技術(スキル)などを試行的に整理する。 あわせて、科目「森林科学」関連科目の内容分析として、戦後の教科書の内容の変遷について、林業土木分野を対象に整理し、大学教育の内容および専門書との内容との比較を行う。科目「林産物利用」科目の内容分析として、中学校技術・家庭科技術分野における関連する教育内容(単元:材料と加工、生物育成)と比較し、大学の林産科学における教育内容について整理する。 また、高校教育現場での教育の実態および教科書の使用状況について、森林・林業関連科目を開設している専門高校の教育実態を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由1)非常勤雇用(データの追加とデータ分析)。教育内容の検討を行うために、専門高校における教育の実態に基づいた分析を行うため、全国高等学校森林・林業教育研究協議会の研究大会に参加し、現職教員に聞き取りを実施した。さらに、森林・林業関連学科に関するデータを入手することができた(協力:林野庁研究指導課)。データの分析が必要となったが、非常勤雇用を年度内に増員することができなかったため、データ分析のための人件費分を翌年に繰り越した。 (理由2)論文掲載。学会発表を行った研究成果についての論文投稿が遅れたため、論文別ずり代分を翌年に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)人件費(非常勤雇用):森林・林業関連学科に関するデータ(協力:林野庁研究指導課)の入力と分析を行うための人件費とする。 (2)その他(論文別ずり代):学会発表を行った研究成果について、学会誌への論文投稿の際の別ずり代として使用する。
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