研究課題/領域番号 |
26285209
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
石原 保志 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (70212917)
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研究分担者 |
土田 理 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (10217325)
小林 正幸 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (50215365)
佐藤 正幸 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (50222021)
若月 大輔 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (50361887)
西岡 知之 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (70310191)
三好 茂樹 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (80310192)
河野 純大 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (90352567)
森下 孟 鹿児島大学, 教育学部, 講師 (70642528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育学 / 特別支援教育 / 通常学級 / リソースルーム / 聴覚障害 / 通級 / 特別支援学級 |
研究実績の概要 |
1.教育支援ネットワーク体制の構築:これまでの研究で構築した鹿児島地区のネットワークを強化するため、屋久町立安房小学校難聴児通級指導教室のネットワーク環境を整備した。また各地で行われている聴覚障害教育担当教員が集う研修会等でバーチャルリソースルームを紹介し、沖縄県難聴・言語障害教育研究会との連携を開始した。 2.遠隔指導、支援のニーズの把握:本研究の基礎資料を得るため、難聴・言語障害学級、教室が抱える課題と遠隔支援に対するニーズを把握することを目的とした調査を実施した。全国公立学校難聴・言語障害学級設置校一覧(全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会,2013)に記載されている学校2650校に調査を依頼し、学級、教室を担当している教員による回答を求めた。2015 年3 月に、郵送による質問紙調査を行った。調査項目は、学級、教室の実態に関する設問6項目、遠隔指導、支援に関する設問3項目であった。対象校のうち1051校から回答を得た(回収率39.7%)。調査結果を分析中であるが、現在までに以下のことが分かった。 ・障害児の指導、支援において課題となっていること:回答校の半数以上が、教員の指導法に関する知識、技術の不足をあげていた。児童、生徒の通学の問題(交通、距離等)をあげた学校は10%程度にとどまったが、これは学級、教室が抱えている課題が地理的環境にあまり関わりがなく、全国的に共通した傾向があることを示していると考えられる。 ・バーチャルリソースルームに関するニーズ:言語指導、発音指導等に関する教材の提供は60%以上と最も多く、直面している児童、生徒の指導に直接結びつく内容を、遠隔支援に対して期待する教員が多いことが分かる。また40%程度の学校が教員に対する専門的助言をあげており、現場で課題となっている「教員の指導法に関する知識、技術の不足」の改善を求ていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.教育支援ネットワーク体制の構築:これまでに行ってきた鹿児島地区のろう学校、通級指導教室のネットワークを拡充することができた。また屋久町立安房小学校をはじめとした学校の通信環境を改善することができた。長崎地区においては、ろう学校が離島(壱岐)の難聴通級指導教室に対する支援を継続して行い、これに対して研究代表者、分担者が必要な情報、資料を提供することができた。また新たに沖縄地区の難聴言語指導教室担当者との連携体制を構築しつつある。 2.遠隔指導、支援のニーズの把握:研究実績の概要に記したように、全国公立学校難聴・言語障害学級設置校一覧(全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会,2013)に記載されている学校2650校に調査を依頼し、学級、教室を担当している教員による回答を求め、1051校から回答を得た(回収率39.7%)。現在、回答を分析途中であるが、学級、教室が抱えている課題とそれに対するバーチャルリソースルームの支援を明らかにする予定である。 3.試行版Webサイトの構築と多地点間通信実験:平成25年度までに構築したWebサイトの問題点を改善した新たなバーチャルリソースルーム用Webサイトを立ち上げた。現在までのところ、ライブによる遠隔指導、支援、交流、教育相談が可能であることが、試行実験で確認できている。実際の運用は平成27年度以降になる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
1.教育支援ネットワーク体制の構築:平成26年度に実施した全国公立学校難聴・言語障害学級設置校の中で、バーチャルリソースルームの利用及び研究への協力について肯定的回答があった学校、担当者と連絡をとり、自立活動教材の共有、情報保障環境の整備(遠隔文字通訳)、特別支援学級、通級指導教室の児童、生徒、担当教員、保護者からの教育相談、遠隔授業等を行うための人的ネットワークを拡充する。特に本研究に積極的な関与意志を表明している沖縄県難聴・言語障害教育研究会に加盟する学級、教室の担当者との連絡を密に行い、沖縄県の離島、僻地への支援を実施する。 2.遠隔指導、支援のニーズの把握:上記調査の結果を詳細に分析し、「1)障害児者の指導に供する教材の提供(言語指導、発音指導等)。2)Web会議システムを通した各校の障害児者間の交流。3)遠隔情報保障(スマートフォン等を利用した文字通訳)。4)遠隔教育相談(Web会議システムによる専門家等による進路相談等)。5)教員に対する教育、支援に関する専門的助言(Web会議システムまたはメール)。6)教員に対する研修(Web会議システムによる遠隔受講)。7)複数校の教員間の情報交換(Web会議システムまたはメーリングリスト等)。8)その他。」のニーズ関する状況を明らかにする。 3.試行版Webサイトの構築と多地点間通信実験:現在までのところ、ライブによる遠隔指導、支援、交流、教育相談が可能であることが、試行実験で確認できている。実際の運用は平成27年度以降になる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.教育支援ネットワーク体制の構築:予定していた鹿児島地区のろう学校、通級指導教室のネットワークに関する協議会の実施が延期された。この理由は、中核となっていた学校担当者の異動の影響が大きく、新たに協力校に赴任した教員への研究に関する説明、啓発に時間を要したこと、この結果、会合の日程調整が年度内に実施するのに困難となったことが挙げられる。 2.遠隔指導、支援のニーズの把握:研究実績の概要に記したように、全国公立学校難聴・言語障害学級設置校を対象に、教育、支援の実態と課題、本研究のニーズに関する調査を実施したが、調査時期が遅れたため、訪問調査及びニーズに即したネットワーク環境の整備が一部学校のみであった。 3.試行版Webサイトの構築と多地点間通信実験:現在までのところ、ライブによる遠隔指導、支援、交流、教育相談が可能であることが試行実験で確認できているが、教材の提供や共有等の試行が未実施である。
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次年度使用額の使用計画 |
1.教育支援ネットワーク体制の構築:鹿児島地区のろう学校、通級指導教室のネットワークに関する協議会を実施する。あわせて長崎地区、沖縄地区においても、研究協議会を実施する。2.遠隔指導、支援のニーズの把握:全国公立学校難聴・言語障害学級設置校を対象に行った質問紙調査の結果を分析し、本研究に対して遠隔支援のニーズがある特別支援学級、通級指導教室について、訪問調査及びニーズに即したネットワーク環境の整備を行う。3.試行版Webサイトの構築と多地点間通信実験:筑波技術大学のサーバを経由して、ライブ通信とあわせて、各地区のろう学校、特別支援学級、通級指導教室の担当教員が教材等のリソースを共有し、また情報保障(文字通訳)ができる環境を整備する。 次年度使用額は、平成27年度分と合わせて、これらに必要な旅費等に使用する予定である。
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