研究課題/領域番号 |
26286002
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水野 元博 金沢大学, 物質化学系, 教授 (70251915)
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研究分担者 |
井田 朋智 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30345607)
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロトン伝導体 / 分子運動 / 水素結合 / 固体NMR / 高分子 |
研究実績の概要 |
本研究では,固体プロトン伝導性物質の静的・動的局所構造を詳細に調べ,その局所構造の情報を基にした試料調製により,結晶や高分子の高プロトン伝導性物質の開発を行うことを目的とする。セバシン酸イミダゾリウム結晶においては、新規の調製法により高いプロトン伝導性を示す結晶を得ることに成功している。セバシン酸イミダゾリウム結晶は温度を上げると326 Kで相転移を起こし、高プロトン伝導相になる。本年度の研究により、この高プロトン伝導状態は室温に戻しても維持されていることが明らかになった。セバシン酸イミダゾリウム結晶は高温相では結晶性を有しているにもかかわらず、イミダゾール分子は高速で等方回転しており、イミダゾールの配向性のみが融解したプラスチック相のような状態になっていることが明らかになった。また、新規に高プロトン伝導性ジホスホン酸イミダゾリウム結晶の調製に成功した。ジホスホン酸イミダゾリウム結晶は温度を上げると362 Kで相転移を起こし、高プロトン伝導相になる。この結晶の相転移は可逆的であった。また、高プロトン伝導相では等方回転しているイミダゾールよりも分子面内の回転をしているイミダゾールのほうが多く存在するなどセバシン酸イミダゾリウム結晶とは性質が大きく異なることがわかった。アルギン酸(AA)とイミダゾールの複合体においてはカルボキシ基からイミダゾールへのプロトン移動がプロトン伝導の律速になっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セバシン酸イミダゾリウム結晶の高プロトン伝導性が室温に戻しても維持されていること明らかにした。また、プロトン伝導性とイミダゾールの運動状態の関係を明らかにする事が出来た。セバシン酸イミダゾリウム結晶の研究をもとに新規の高プロトン伝導性結晶としてジホスホン酸イミダゾリウム結晶を調製する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
セバシン酸イミダゾリウム結晶の室温での高プロトン伝導状態の静的・動的局所構造解析を行う。室温で高プロトン伝導状態がどのくらいの時間保たれるのかを明らかにする。ジホスホン酸イミダゾリウム結晶の静的・動的局所構造解析を行い、プロトン伝導性との関係を解明する。セバシン酸イミダゾリウム結晶との類似性と相違性を明確にする。これらの情報をもとに新たな高プロトン伝導性物質の創成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究により、ジホスホン酸イミダゾリウム結晶が高いプロトン伝導性を示すことがわかった。そこで、平成28年度に新たにジホスホン酸イミダゾリウム結晶の研究を推進するため、研究費の一部を繰り越し、平成28年度に試薬等を購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
アルキル鎖の長さの異なるジホスホン酸及び重水素化イミダゾールを購入する。これらを用いてジホスホン酸イミダゾリウム結晶の重水素化物を合成し、プロトン伝導度と分子運動の関係を調べる。
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