研究課題/領域番号 |
26286003
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小松 直樹 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30253008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 分子認識 / 分離 |
研究実績の概要 |
これまでに検討をしてきた分子ピンセットは、各種単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離において、優れた選択性を示してきた。しかしながら、より大きな径をもつ二層カーボンナノチューブ(DWNT)を包接する大きな空孔を有するホスト分子の合成は困難であり、これまでは、その分離を行うことができなかった。そこで本年度は、前年に合成した2枚のポルフィリンが平行に並んだホスト分子(分子ノギス)のポルフィリンの間隔をより広げることで、DWNT の分離について検討を行った。 具体的には、SWNT の分離で用いたカルバゾールーアントラセンーカルバゾールのスペーサーをもつ分子ノギスのアントラセン部分をピレンに代えた分子ノギスを設計、合成した。それにより、ポルフィリン間の距離が 1.4 nm から 1.9 nm へと 0.4 nm 大きくなり、その分、より大きな径を有する DWNT の包接が可能となった。結果として、直径 1.25 - 1.75 nm の DWNT の純度が、原料の20% から >80% に飛躍的に向上した。この結果は、コンピューターシュミレーションの結果とも一致した。 また、分子ピンセットの光学異性体を個別に合成し、R, S 体それぞれを用いて、DWNT の分離を行ったところ、得られた DWNT から対称的な CD が得られた。これにより、光学活性 DWNT を得ることに成功した。 この成果は、J. Mater. Chem. A に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の研究実施計画にある DWNT の分離について、検討を行い、予定通りの結果が得られ、それについて、論文発表を行った。順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、グラフェンの層数に基づく分離について検討を行う。まずは、合成が比較的容易で量産が可能な単層グラフェン向け分子ノギス、および、その receptor をポルフィリンからピレンに代えた分子ノギスを用いて、単層グラフェンを標的とした分離について検討を行う。実験は、SWNT の分離の際と同様の方法で行う。すなわち、市販のグラファイトと分子ノギスをメタノールに加え、バス型装置により超音波を照射し、グラファイトのはく離と分子ノギスとの錯形成を行う。その後、遠心により、錯形成に至らなかったグラファイト、あるいはグラフェンを分離し、グラフェンと分子ノギスとの錯体が溶解している上澄み液を得る。まず、この溶液をラマンスペクトル、吸収スペクトル、AFM、STEM 等で分析し、まず、グラフェンが分離されていること、さらには、その層数を決定する。また、必要であれば、この溶液を濃縮し、得られた固体をピリジンやテトラヒドロフラン (THF) で洗浄することにより、錯体から分子ノギスを除いた後、同様の分析をすることも可能である。予想通り、単層グラフェンが選別されれば、ラマンスペクトルの G’/G が大きくなることから、容易に判別できると考えられる。さらに、AFM により厚みや広さを確認する。申請者らは、現在、“ヒドロキシトリフェニレン (HTP) によるグラファイトのは く離”について検討を行っており、HTP 存在下、グラファイトに超音波照射することで、グラフェンが水中で安定に分散することを見出した (G. Liu, N. Komatsu, manuscript in preparation) 。この実験を通して、グラファイトのはく離やグラフェンの分析に関する知識と経験を蓄積している。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学への異動が決まっており、研究室の立ち上げに使用するため、次年度に繰り越しした。
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次年度使用額の使用計画 |
本基盤研究を遂行するために必要な分析機器類の移動と立ち上げ、さらには、必要な試薬、器具類の購入を行う。
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