研究課題/領域番号 |
26286004
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
橋本 修一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70208445)
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研究分担者 |
柳谷 伸一郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (40314851)
梶本 真司 東北大学, 理学研究科, 助教 (80463769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 貴金属ナノ粒子 / レーザー / 光熱効果 / プラズモン |
研究実績の概要 |
26年度の研究では、ナノ秒パルスレーザーとストリークカメラ、およびマイクロ秒白色光源を組み合わせることにより、ナノ秒パルス幅内の吸収スペクトルの時間変化を観測可能なピコ秒時間分解過渡吸収計を構築し、その性能を評価した。また、ナノ秒レーザーを用いた銀イオンの2光子還元法による銀ナノ粒子の合成について、得られる銀ナノ粒子の形状、サイズに対する界面活性剤の効果を調べた。
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた研究として、1.高密度に金ナノ粒子が表面分散したカバーガラスの液中観察、2.CWレーザー照射された金ナノ粒子から発生するプラズモニックナノ(マイクロ)バブル(PNB,PMB)が生成、成長、消滅する様子の顕微鏡観察、3.PNBのフォースカーブ測定による粘弾性評価、に関する検討を行った。得られた知見として、プラズモニック加熱された金ナノ粒子から生成したバブルが水蒸気リッチな構造から、より安定した気体バブルに変移する事、基板表面に安定して存在するナノバブルが観察されるなどの新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ秒レーザーパルス幅内のピコ秒時間分解計測についてはピコ秒時間分解過渡吸収計の構築とそれを用いた測定が柱となるが、26年度の研究ではナノ秒パルスレーザーとストリークカメラ、およびマイクロ秒白色光源を組み合わせることにより、ナノ秒励起-ピコ秒観測が可能な過渡吸収分光装置を構築し、評価した。電気的にそれらの装置を同期することにより、数100 ps程度のジッターで測定が可能であることが分かった。また、予備実験から3時間程度の積算で十分なS/N比で測定可能であると結論付けた。
これに加えて、金ナノ粒子のCWレーザー加熱により発生したプラズモニックナノバブルの原子間力顕微鏡観察について実験的検討がなされた。実験開始時には、ガラス上に分散した金ナノ粒子が溶液中でAFMカンチレバーの走査によって離脱したり、バブルの発生による急激な相互作用力の変化など、いくつかの問題点があったが、金ナノ粒子の分散密度を増加や、より柔らかく且つ振動数の高いカンチレバーを使うことにより、光学顕微鏡では直接観察が難しい回折限界以下の大きさのバブルの観察や、フォースカーブ測定が可能となり、概要に示した新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に構築したナノ秒励起-ピコ秒観測が可能な過渡吸収測定系を用いて、実際に金ナノ粒子のナノ秒パルスレーザー励起に伴う過渡吸収スペクトルを測定し、パルス幅内に起こる温度変化と、ナノ粒子および媒体の相転移を追跡する。特に、高圧セルを用いて高圧下、常圧下で実験を行うことによって、バブルの発生が及ぼす金ナノ粒子の温度上昇、および相転移への影響について考察する。
金ナノ粒子の分散密度とCWレーザーパワー密度の相関について、プラズモニックバブルの発生過程の顕微鏡観察から、より詳細な検討を行う。金ナノ粒子の分散密度を減少させた系におけるプラズモニックバブルの成長・消滅速度や表面ナノバブルの形状に対するレーザーパワー密度依存性を検討することで、最終的には、現在のところ実験的な難しさを伴う金ナノ一粒子からのプラズモニックバブルのナノレベル観察に知見を得るための研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に納品となり、支払いが完了してないため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月に支払いが完了する予定である。
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