研究課題/領域番号 |
26286007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内藤 賀公 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90362665)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 表面物性 / フォノン / ナノコンタクト / トライボロジー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、原子間力顕微鏡法(AFM)を応用して新たに表面原子の振動状態や電荷分布を高感度に測定する技術を開発し、表面欠陥や不純物周りの局所的な表面物性状態(結合弾性状態、電荷秩序分布)を明らかにすることである。 現在まで探針-試料表面間に働く相互作用力をサブ原子スケールで空間的にベクトル表示できる技術を確立した。この研究成果はこれまでの顕微鏡技術では達成できなかったものであり、論文にまとめて国際的に著名な学術誌に投稿中である。 表面原子の振動励起状態を探針-試料表面間に電圧印加することでAFM観測しようとしてきたが、想像以上に微弱な振動であることが判明した。これを捉えるためには、振動励起方法の見直しと既存の原子間力顕微鏡装置の力検出感度をさらに向上させる必要がある。そこで、AFMユニットを改良し現有の光干渉を用いた力センサーの変位検出法から光てこ法の検出方式に変更した。この改良によって、検出される力のノイズ密度を30-40fm/√Hzから15-25fm/√Hzに向上させることに成功した。 また、固体表面の電荷分布やその変化(電荷移動)を捉えるために新しいケルビンプローブ力顕微鏡法(KPFM)を考案した。現在原子スケールの電荷秩序を持つTiO2(110)表面を用いて電荷移動現象の観測も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
固体表面原子の振動励起状態を観測するためにさらなるAFMの力検出感度の向上を余儀なくされたため、AFMユニットの改良を行った。この新しいユニットの作製に時間を要したため当初予定から進捗が遅れている。 また、固体表面電荷分布やその変化を捉えるための新しい電荷計測技術を開発しており、これを用いることで、効率よく表面弾性状態と表面電荷分布を同時測定することが可能となっているため、今後の研究をスムーズに行える体制を整えている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 高周波パルスや電荷注入による原子振動励起の観測---探針試料間への単純な電圧印加で原子振動励起状態を捉えることが困難であるため、交流電圧や高周波パルス電圧の印加を試みることで表面原子振動励起を試みる。また、STM状況下での電荷注入によりGeダイマー原子のロッキングモード振動が励起されることもわかっているため、その場合、AFM探針による電荷注入励起を試みる。 2) 新しい周波数変調静電気力分光法の開発と表面電荷分布の観測---表面の電荷分布を高感度に観測するため、新しい3倍振動を用いた静電気力分光法を開発した。この手法と多周波数モード計測を利用して探針-試料間の静電気力によるカンチレバーの共振周波数の変化(周波数シフト)を三次元的に測定し、数値計算(アルゴリズムは開発済み)により、静電気力の空間分布、さらにはクーロンポテンシャルの空間分布を原子スケールで導出できるようにする。さらに、得られた弾性状態と電荷分布を解析することによって、Ge(001)表面上の弾性状態と電荷状態の相関について解析し考察する。 3) Ge(001)表面上のダイマー欠陥周りの表面物性の観測---ダイマー欠陥やステップには応力が集中するため、そこから付加的に歪場が形成され周辺の表面物性(原子の結合状態や電荷秩序)が影響を受ける。この表面物性の変化を表面原子振動モード測定技術、他周波数モードAFM法、新しいKPFM法を駆使して観測し、歪場と原子結合状態と電荷秩序の変化を観測する。さらにこれら物性間の相関関係について解析し考察する。また、歪場、表面振動モードと表面弾性状態、電荷状態を解明し、それらの相関関係について理論的に考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際会議に出席できなかっため次年度に他の国際会議へ出席予定である。そのための使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
国際的な学術会議に参加し、研究成果の発表を予定している。
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