研究課題/領域番号 |
26286008
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高橋 和敏 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (30332183)
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研究分担者 |
今村 真幸 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 助教 (40554358)
東 純平 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (40372768)
山本 勇 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 助教 (80528993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェン / レーザー / 光電子分光 / 放射光 / 表面・界面 |
研究実績の概要 |
本研究では、SiC上のエピタキシャルグラフェンを出発物質として、ドープ制御した準自立グラフェンや、アルカリ金属類とのグラフェン層間化合物、重元素吸着系などのグラフェン関連物質を作製し、シンクロトロン放射光とフェムト秒レーザーという2種の先端的光源が持つ優れた特性を駆使した光電子分光実験を行なう。 初年度においては、まず、既設の光電子分析システムに、広取り込み角度型の電子レンズ装置を整備した。参照用試料を用意し±15°から±3.5°の範囲で取り込みモードを切り替えながら測定できることと、金フェルミ端の測定から充分なエネルギー分解能を達成できていること、およびSiC上グラフェンのDirac点付近のバンド構造がより高い波数分解能で測定できることを確認した。併せて、レーザー光による2光子光電子スペクトルの時間分解測定、角度分解測定、励起波長依存性測定を高効率で行えるようにソフトウェアを改良した。 また、SiC上に作製した1, 2, 3及び9層のグラフェンの角度分解2光子光電子分光実験から、グラフェンに特有の偶奇2種の対称性を持つ鏡像準位のバンド分散を明らかにするとともに、時間分解2光子光電子分光からその寿命を実験的に明らかにした。 さらに、酸素原子をインターカレートすることにより作製したp型エピタキシャルグラフェンの時間分解・角度分解2光子光電子分光により、バッファ層がある系に比べて大きな結合エネルギーを持つ鏡像準位が存在することと、1層のp型グラフェンの場合にはp*状態の電子寿命が増大していることからDirac点におけるバンドギャップ形成が示唆されることを実験的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光電子分析装置の高性能化について、広取り込み角度型の電子レンズ装置の整備と性能評価、放射光とレーザーの組み合わせ実験システムの調整、広帯域2光子光電子分光システムの整備を予定したスケジュールで完了できた。 本課題の出発物質となるSiC上に作製したnドープグラフェンにおける鏡像準位のバンド分散と電子緩和に関して論文発表や招待講演を行うとともに、酸素原子をインターカレートすることにより作製したp型エピタキシャルグラフェンの時間分解・角度分解2光子光電子分光の結果から、その鏡像準位のバンド分散やp*状態の寿命について国際会議にて発表を行った。 以上のことから、本課題は現在までに概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、アルカリ金属との層間化合物における新奇な2次元バンド分散の直接決定を行う。特に、低温下にてk//=0近傍の非占有領域に発現する非占有バンドに着目し、励起エネルギー可変の角度分解2光子光電子分光、および時間分解2光子光電子分光を行う。続いて、Pb,Bi等重元素を共吸着した系でのスピン依存占有・非占有バンド分散解明を行う。Pb/Bi比を系統的に変化させながら、放射光とレーザーを駆使した光電子分光法により各元素の化学結合状態、占有・非占有状態のバンド分散関係、フェムト秒領域における励起電子状態の寿命の変化を明らかにしていく。また、これらのために必要な2光子光電子スペクトルの円2色性測定のための実験システムの整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への旅費として計上していたが、業務上の都合により参加できなかった。成果は他の国内開催の国際会議で発表したが、所属機関の予算により旅費をまかなったために次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表のための旅費として次年度以降に使用する。
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