研究実績の概要 |
本研究では、SiC上のエピタキシャルグラフェンを出発物質として、ドープ制御した準自立グラフェンや、超伝導発現が期待されるアルカリ金属類とのグラフェン層間化合物、スピン分裂電子状態が期待される重元素吸着系などのグラフェン関連物質を作製し、シンクロトロン放射光とフェムト秒レーザーという2種の先端的光源が持つ優れた特性である、光子エネルギー選択性、偏光制御性、パルス性を駆使した光電子分光実験を行なう。 今年度は、酸素原子をインターカレートすることにより作製したp型エピタキシャルグラフェンの時間分解・角度分解2光子光電子分光により、バッファ層がある系に比べて大きな結合エネルギーを持つ鏡像準位が存在することと、1層のp型グラフェンの場合にはp*状態の電子寿命が増大していることからDirac点におけるバンドギャップ形成が示唆されることを、ディラック点がフェルミ準位付近に位置する水素原子をインターカレートした準自立グラフェンでの結果と比較しながら明らかにした。これらについて成果発表を行った(2015CC3DMR(Busan, June 2015, invited), USD9 (Moriyama, May 2015), ICFSI-15, Hiroshima, Nov. 2015))。 また、前年度までに整備を進めてきた光電子分析システムでの2次元ARPESマッピングおよびレーザー光による2光子光電子スペクトルの時間分解測定、角度分解測定、励起波長依存性測定、偏光依存性測定による手法について発表した。(日本物理学会 2015年秋季大会, 吹田市, 2015年9月,シンポジウム講演) さらに、特有のスピン構造が期待される試料として、グラフェンを基板としてBi(110)の超薄膜を作製することを開始し、成長時の基板温度、成長後のアニール条件の最適化により、2,4,6原子層の超薄膜を作製することに成功した。ARPESマッピング, LEED測定および理論計算との比較から、Bi(110)超薄膜は6つの面内ドメインを形成していることを明らかにした。
|