研究実績の概要 |
本研究では、SiC上のエピタキシャルグラフェンを出発物質として、ドープ制御した準自立グラフェンや、種々の原子をインターカレートした系、平坦性と化学的安定性が高いグラフェンを基板としたヘテロ接合系を作製し、シンクロトロン放射光とフェムト秒レーザーという2種の先端的光源が持つ優れた特性である、光子エネルギー選択性、偏光制御性、パルス性を駆使した光電子分光実験を行なう。 今年度は、特有のスピン構造が期待される試料として、グラフェンを基板としたBi(110)の超薄膜に着目し、成長時の基板温度、成長後のアニール条件の最適化により、2,4,6原子層の超薄膜を作製した。ARPESマッピング, LEED測定および理論計算との比較から、Bi(110)超薄膜は6つの面内ドメインを形成していることを明らかにした。ARPES測定からは、1BLおよび2BLでは、それぞれΓK1線上にホールポケットが、3BLではΓK1線上の電子ポケットとΓ点周りのホールポケットが形成されていることわかった。AR2PPE測定からは、励起エネルギーに依存して強度分布が変化する構造がフェルミレベルの上3.0~4.3eVに観測され、終状態エネルギーがほぼ一致する放射光8.75eVによるARPESとの比較から価電子バンドと鏡像準位間の共鳴的な2光子励起に起因すると結論した。真空準位に対する鏡像準位の結合エネルギーは、1BLから3BLの膜厚において変化はなかった。これらの成果は、日本物理学会、放射光科学合同シンポジウム、VUVX2016国際会議にて発表するとともに、論文発表準備中である。
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