研究課題/領域番号 |
26286009
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 丈士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (30415707)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 分離 / 孤立 / エナンチオマー / DNA |
研究実績の概要 |
平成27年度は、カーボンナノチューブとDNAの相互作用を利用した配列化を行う上で重要となる、カーボンナノチューブのエナンチオマー(右巻きと左巻き)のDNAに対する相互作用を解析する実験を中心に研究を進めた。相互作用の解析は、DNAで被覆されたカーボンナノチューブに光学活性を持たない界面活性剤を加えた際に生じる分散剤の置換反応を、光吸収スペクトルのピークシフトから見積もることにより行った。良好な実験条件を導くのに時間を要したが、最終的に、右巻きと左巻きの異なる構造をもつカーボンナノチューブと特定の配列をもつ一本鎖DNAの相互作用が異なることを見いだした。しかしながら今回得られたデータは定性的な物であるので、次年度においてデータ量を増やし、より信頼のおける定量的な結果を得るべく詳細な解析を行う予定である。 また、電極とトランジスタのチャネル部を、孤立状態の単一構造のカーボンナノチューブを用いて作成する全カーボンナノチューブデバイスを実現するために重要な、金属型カーボンナノチューブの構造分離に関する研究も進め、(10,4)というカイラリティをもつ金属型カーボンナノチューブを高度に濃縮することに成功した。円二色性スペクトル測定により、金属型カーボンナノチューブとしては初めてとなるエナンチオマーの分離を確認した。本成果は、米国化学会のAnalytical Chemistry誌(IF=5.636)に掲載された。以上の研究はテクニカルスタッフ一名を雇用して推進した。最終年度となる次年度は、共同研究者を加え、さらに、テクニカルスタッフも増員し、研究進度の加速を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブのエナンチオマー(右巻きと左巻き)に対するDNAの相互作用に違いを解析する実験系の確立を終え、定性的ではあるが2者で違いが生じることを示すことができており、次年度により詳細な解析ができる状態になっており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
エナンチオマーのカーボンナノチューブとDNAの詳細な解析のために、完全に単一構造(単一カイラリティでエナンチオマーも分離したもの)のカーボンナノチューブが大量に必要となるため、そこを担当する共同研究者を新たに加えて、研究を効率的に進めて行く予定である。また、テクニカルスタッフの増員も行うことにより、最終年度の研究進度を加速させる予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度において、カーボンナノチューブのエナンチオマー(右巻きと左巻き)に対するDNAの相互作用を測定する系の確立に想定以上の時間を取られたため、予定する購入物品の必要性が次年度に持ち越されたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に生じた未使用額については、平成27年度に購入を延期した物品のほか、平成28年度の研究の遂行に必要となる消耗品などに充てる。
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