研究課題/領域番号 |
26286010
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松井 淳 山形大学, 理学部, 准教授 (50361184)
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研究分担者 |
永野 修作 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40362264)
源明 誠 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (70334711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロトン伝導 / ラメラ構造 / 2次元伝導 |
研究実績の概要 |
前年度において高分子ナノシート積層体界面が優れたプロトン伝導パスとして働く事を示し、弱酸のカルボキシ基をプロトンソースとした共重合体p(DDA/AA)においてNafionに匹敵するプロトン伝導度を達成することを示した。そこで本年度は種々の導入率のp(DDA/AA)積層体のイオン伝導度測定を行い、プロトン伝導性のイオン性基含有率依存性を検討した。X線回折測定よりp(DDA/AA)積層体はその含有率が49%までの物が均一なラメラ多層膜を構築することを明らかにした。さらに、プロトン伝導度測定環境下である60度、相対湿度98%の環境下でアニールすると、一度構造が乱れた後に、再度新たな構造へとorder-order転移を示すことがわかった。伝導度の時間依存性とorder-order転移時間が一致していることから、高伝導度を示すラメラ層が存在する事を明らかにした。ラメラ平面方向のプロトン伝導度はAAの導入率が高いほど増大した。また含有率0.32~0.49において、活性化エネルギーは0.30 eV程度であり、同じ伝導挙動を示すことが示唆された。このとき、プロトン伝導は水分子のネットワーク構造を介しており、また、二次元プロトン伝導パスにおけるカルボキシ基間の距離が、効率的なプロトン輸送を示す距離(0.7 nm)に類似していることから、理想的なプロトン伝導が行われていると考えられる。一方で、n=0.07, 0.19においては、二次元プロトン伝導パスにおけるカルボキシ基間の距離が効率的なプロトン輸送を示す距離から離れており、非効率なプロトン伝導挙動を示した。プロトン伝導度の距離依存性は生体膜界面におけるプロトン輸送と類似しており、高分子ナノシート積層体が生体膜モデルとして有用であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子ナノシート積層体界面における優れたプロトン輸送機構について明らかに出来たと共に、この積層体が生体膜におけるプロトン輸送モデルとして有効であることを示しており、これは研究目的を達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまではイオンソースとしてカルボキシ基のみを用いていたが高分子ナノシート積層体界面がプロトン伝導パスとして有効であることを明確にするためホスホン酸など他おイオンソースを導入し、これらが高い伝導度を示すことを明らかにする。さらに、ホスホン酸基を導入した積層体においては無加湿下におけるプロトン伝導に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年10月、高分子LB膜中におけるプロトン伝導測定の比較としてバルク薄膜のプロトン伝導の測定を行っていたところ、当初の予想に反し、バルク薄膜が加湿下において高度に配向することが明らかとなった。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、バルク薄膜が加湿することでどのような配向構造を取るのかを検討するためX線回折実験を追加で実施する必要が生じた。 使用計画:シリコン基板購入200,000円。CaF2基板購入費:100,000円。X線回折使用量:150,000円。合成用試薬、ガラス器具購入費:100,000円。印刷費:19,400円
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次年度使用額の使用計画 |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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