研究課題/領域番号 |
26286010
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松井 淳 山形大学, 理学部, 教授 (50361184)
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研究分担者 |
永野 修作 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40362264)
源明 誠 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (70334711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ラメラ構造 / 生体膜 |
研究実績の概要 |
生体膜界面においては高いプロトン伝導性が達成されることに着目し、生体膜類似構造を有する高分子ナノシートをLangmuir-Blodgett法により1層ずつ積層して得られるラメラ集積体における親水界面を利用した高分子電解質に関する研究を推進してきた。本年度は生体膜の構成成分の50%以上がリン脂質から形成されていることを鑑み、プロトンソースとしてホスホン酸を有する高分子ナノシートの合成と積層化に取り組んだ。すぐれた高分子ナノシートを形成するドデシルアクリルアミド(DDA)とビニルホスホン酸(VPA)をエタノール中で、アゾ開始剤を用いたラジカル共重合によりp(DDA/VPA) を合成した。元素分析よりVPAの含有率(n)が0.19ー0.52と求まり、仕込み比と実際に合成されたコポリマー中の含有率の比からランダムコポリマーであることがわかった。そこでコホリマーの水面上単分子膜挙動について表面圧(π)ー面積(A)等温線測定により検討した。π-A等温線からは合成したすべての共重合体において、圧縮に伴う鋭い表面圧の立ち上がりがみられ、安定な単分子膜が形成していることが確認された。また得られた単分子膜の極限占有面積からVPAは水面下に存在すると考えられた。続いて、p(DDA/VPA)の基板への累積を試みたところn=0.45までは基板に積層することができたが、n=0.52のものは多層積層ができなかった。これはVPAの含有率が多く親水性が高まったためと考えられる。積層可能であったn=0.45までの高分子ナノシート積層体について、XRD測定を行ったところ高分子ナノシートの層構造に由来する鋭いピークが確認され、均一なラメラ状多層膜が形成されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体膜のモデルとしてホスホン酸基を有する高分子ナノシートの合成とその積層膜の作製を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
合成に成功したホスホン酸含有高分子ナノシートに関してVPAの含有率が0.45までのものがLangmuir-Blodgett法により積層可能であり、その構造がラメラ構造であることが明らかとなった。そこで今後はラメラ構造における親水領域をプロトン伝導チャネルとすることでラメラ平面方向のプロトン伝導度の測定を行う。また伝導度におよぼすVPA濃度の依存性からプロトン伝導機構を明らかにし、生体膜界面におけるプロトン輸送のモデルを提唱する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年10月、高分子LB膜中におけるプロトン伝導測定の比較としてバルク薄膜のプロトン伝導の測定を行っていたところ、当初の予想に反し、バルク薄膜が加湿下において高度に配向することが明らかとなった。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、バルク薄膜が加湿することでどのような配向構造を取るのかを検討するためX線回折実験を追加で実施する必要が生じたため。
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