研究課題
本年度は、主にフラーレン(C60)の金属内包ドーピングに着目した。ドーパントとしてはLi+イオンを選択し、内包ドーピングによりC60の電子アクセプター性の増大を狙った。本研究では、C60への低速Li+イオンビーム照射によるLi+@C60生成過程の実験的・理論的調査を行った。さらに、この結果を用いて最適化された合成方法により作製したLi+@C60[PF6-]塩を用い、Li+@C60の電子状態の詳細な評価を行った。C60分子層へのLi+イオンビーム照射について、まず第一原理計算にから、Liイオンが内包される確率はイオンビームのエネルギーが約30eVで極大となることが明らかになった。これに基づき、Cu(111)単結晶表面上に作製したC60単分子層に対して、in-situでの30eVのLi+イオンビームの照射を行った。照射後の分子を走査トンネル顕微鏡(STM)で直接観察した結果、単分子層中の大部分のC60分子はイオンビームによりスパッタされることがわかったが、NMR計測により表面に残っているC60分子にはLiが内包されていることが示唆された。この結果はNanoscale誌に掲載された。次に、Li+@C60[PF6-]塩を用い、塩中のLi+@C60と、塩の真空昇華により作製したCu(111)表面上のLi+@C60分子を対象とした電子状態の詳細計測を行った。塩中のLi+@C60の電子状態は、Liイオンが+1価、C60がほぼ中性の状態を保っていることが示され、理論計算の結果と一致した。さらに、塩の真空昇華で作製したLi+@C60単分子層を評価したところ、約70%の分子からLi+イオンが脱離していることがわかった。しかし、残る30%の分子はLi+イオンを内包しており、STMによる電子状態および理論計算と一致した。この結果はCarbon誌に掲載された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件)
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