研究課題/領域番号 |
26286015
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 慶裕 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30393739)
|
研究分担者 |
小松 直樹 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30253008)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | カーボンナノチューブ / ナノダイヤモンド / 成長駆動力 / 成長核 / 薄膜トランジスタ / バイオセンサ |
研究実績の概要 |
2年目となる平成27年度では、初年度に実施した研究成果をさらに推し進めた。特に、CNT成長核であるナノダイヤモンド(ND)をサイズ分離分離・分散化する技術の高度化、成長駆動力の調整がCNT成長効率・構造に及ぼす効果の直接的な検証、およびCNT薄膜トランジスタ(TFT)によるバイオセンサ動作機構の解明と広帯域化について重点を置いた。 (1)単分散ナノダイヤモンド形成法の開発:1年目の研究を継続し、爆発法よりも一次粒子サイズが大きく金属不純物を含まない高温高圧法で作製したNDのHPLCによるサイズ分離精度向上に重点をおいた。フラクションごとの径分布についてDLSとSTEMで評価し、例えば平均径14nmの場合に20nm以下の分率が90%に向上したことを確認した。 (2)成長駆動力がCNT成長効率・構造に及ぼす効果の検証:これまでに進めてきた駆動力調整の最適化を進め、数層の極薄ND層からの成長技術を確立した。さらに水晶基板を用いて、数層ND層からの水平配向CNT成長に成功した。これにより、成長条件とCNT長・各活性化効率の解析が可能となった。駆動力を調整した場合と一定の場合を対比した結果、これまではラマン分光で間接的に観測していた駆動力調整による高密度・長尺CNT成長の挙動をSEM・AFM像として直接捉えることに成功した。さらにND径によるCNT径制御効果についても明らかにした。 (3)CNT-TFTによるバイオセンサ動作検証:成長駆動力調整で従来法よりも長尺・高密度化したCNT薄膜を活用し、バイオセンサ動作の検証を進めた。昨年度見出したチャネルへの吸着密度による信号方向反転現象について、チャネル表面でのデバイ長の延伸や抗原抗体反応による検出部位の密度調整によって抑制し、極めて広い濃度範囲でIgEを定量検出することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書では、(1)単分散ナノダイヤモンド(ND)形成法の開発、(2)成長駆動力がCNT成長効率・構造に及ぼす効果の検証、(3)高純度CNT薄膜の性能評価、(4)ナノダイヤモンド表面活性化によるCNT構造制御性の検証の4項目を今年度に実施するとしていた。 (1)については高温高圧法で作製したNDの分離技術を確立し、計画通りに進捗している。(2)については、凝集NDと単分散NDでは成長挙動が異なることが判明したため、当初計画とは異なり、項目(4)を合わせて進めるアプローチをとった。その結果、これまで間接的にしか検証されたいなかった駆動力がNDからのCNT成長に及ぼす効果を直接的に検証することに成功した。これは本研究課題の根幹にかかわる重要な成果と認識している。(3)については、単に高感度の検出だけではなく、検出メカニズムの解明やそれに基づく広帯域検出の提案・実証にも進展させた。 以上のように、当初計画を予定通りに進捗させるとともに、当初予定していなかった項目についても実施しており、計画以上に進捗したと評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに研究は順調に進捗しており、そこで得られた成果を基にして、目的の達成に向けて研究をさらに推し進める。研究の進展に伴い新たに顕在化した項目についても積極的に進めていく。 ナノダイヤモンド(ND)のサイズ分離については、爆発法による5nm径のND分離精度の向上を継続的に進めるとともに、金属不純物を含まない高温高圧法NDをサイズ分離し、得られた比較的大きなサイズの単分散NDからのCNT成長への進展させる。成長駆動力がCNT成長効率・構造に及ぼす効果の検証については、駆動力調整の最適化をさらに進め、高効率・構造制御合成を達成する。特にCNT成長プロセスへ水など酸化剤を精密に制御した導入により駆動力を調整し、平衡に近い条件でのCNT合成に重点をおく。高純度CNT薄膜の性能評価については、駆動力調整により高性能化したCNT薄膜FETデバイスを用いて、標準的なターゲット物質であるIgEに加えて、トロンビンなど応用上よりインパクトのあるバイオ物質の検出を行い、多様なバイオ物質の高感度・選択検出における本手法の優位性を実証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の重要な成果発表の場である国際会議NT-15が国内(名古屋)で開催されたため、それにかかわる旅費などの費用が当初計画よりも低減されたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度(2016年度)では、この国際会議NT-16がヨーロッパ(オーストリア)で開催されるが、その旅費・参加費として有効に使用する。
|
備考 |
研究室webページのトップページ ここから成果等についてリンクしている。
|