研究課題/領域番号 |
26286017
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70418698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ細孔体 / ポルフィリン / 光エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
今年度はまずブタジイン骨格で連結された環状ポルフィリン二量体にピリジル基を 導入し、水素結合等を介した自己集合によって形成されるポルフィリンナノチューブ(中心金属:フリーベースとNi)に着目した。 このポルフィリンナノチューブは大きな π 平面に囲まれた特異な空間を提供するため、フラーレンを選択的に内包する。本研究ではリチウム内包フラーレンLi+@C60(Li+@C60)をこのポルフィリンナノチューブ内に内包した分子集合体を作製し、その分光特性及び光電変換特性を系統的に評価した。まず、ポルフィリン二量体とLi+@C60の間の特異な会合形成により可視光領域において良好な光捕集特性を有することが明らかとなった。また、分子集合体作製について良/貧混合溶媒中で混ぜ合わせることにより100 nm程度の粒径をもつナノ粒子を作製することができた。この集合体構造は透過型電子顕微鏡(TEM)により確認できた。次に、ナノ粒子体を電気泳動法にて酸化スズ透明電極上に修飾して湿式型太陽電池を作製した。薄膜の吸収スペクトル測定により可視光領域全域に渡る幅広い光応答が観測された。光電変換特性はI-/I3-をredox coupleとする湿式光電気化学セルにて評価を行った。Li+@C60を内包した場合、光電流発生外部量子効率(IPCE)は20%程度の値に達し、C60の系と比較して光電変換特性の良好な向上が観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度リチウム内包フラーレンを内包したポルフィリンナノチューブ(分子集合体)の作製と太陽電池評価を行うことができ、基本的に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はアセン系やペリレンなどの多環芳香族炭化水素を基盤としたナノ細孔体を構築し、その光物性や光エネルギー変換特性を評価する予定である。多環芳香族炭化水素骨格にジフェニルイミダゾール基やサレン錯体、親水性置換基などの導入、界面活性剤の利用など作製手法の確立をまず行う。その後、定常/時間分解分光特性、電気化学特性、透過型電子顕微鏡による集合体構造評価を段階的に進める。最終的に太陽光発電などの光触媒系へと展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初の研究計画では基本分子であるポルフィリンや多環芳香族炭化水素の合成を行うことを主な目的としていた。しかしながら、ポルフィリンナノチューブの研究展開が予想以上に進行したため、まずポルフィリンナノチューブの研究を前倒しで進めることとした。その結果、多環芳香族炭化水素誘導体の合成に必要な消耗品代やその測定に必要な備品などが次年度以降で購入する必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
ペリレンやアセン系などの多環芳香族炭化水素誘導体の合成をまずは進め、その消耗品代として物品費を使用する。化合物の合成状況に合わせて物性評価に必要な備品購入を進める予定である。
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