研究課題
ゼオライトなどの無機多孔性材料は精密に構造制御されたナノ空間内での特異な化学反応が特徴の一つとして挙げられるが、問題点として、① 構成材料自体の可視光領域での光応答性が乏しい点、② 化学的手法による新たな機能付与が限られる点 が挙げられる。本研究では上述の無機多孔性材料におけるナノサイズの反応場(ナノフラスコ)としての長所を生かしながら、有機色素会合体に特有の励起ダイナミクス発現が可能なナノ細孔体の合成と物性評価を目的とする。27年度は高い光吸収能と電子移動特性を有するポルフィリン誘導体に対し、多孔性配位高分子的手法による分子組織化を行った。多孔性配位高分子錯体は強固な結合力に加え、結合の方向性も有しているため、距離や配向を考慮に入れた構造設計が可能となる。これら組織体における励起寿命は巨視的な形状には依存せず、近接分子間の内部構造に強く反映していることが分かった。さらに、新たに柱状配位子を導入し、局所的な内部構造の異なるポルフィリンの多孔性配位高分子錯体を従来法とコロイド法により作り分けることに成功した。特に、ポルフィリン環内部の金属との配位結合の有無を選択的に制御し、配位結合がない場合は励起状態を長寿命化し、ゲスト分子導入に伴う錯形成定数の向上にも観測された。
2: おおむね順調に進展している
本申請課題における研究目的の一つに、ポルフィリン色素を用いた多孔性配位高分子の合成とその細孔構造を利用したゲスト分子導入に伴う触媒機能評価が挙げられる。27年度は一通りの合成・解析に成功しており、概ね順調であると言える。
28年度は、本申請課題のもう一つの研究目的であるナノ細孔体内部での一重項分裂を発現を取り組む。アセン系もしくはペリレン系の分子を用いてナノ細孔体を構築させ、最終的にエネルギー変換系へと展開する予定である。
装置購入の支出を比較的抑えることができたため。
消耗品購入に充てる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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