研究課題/領域番号 |
26286018
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
古川 一暁 明星大学, 理工学部, 教授 (40393748)
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研究分担者 |
上野 祐子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, その他部局等, その他 (30589627)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / グラフェン / 光エネルギー移動反応 / 電子エネルギー移動反応 / バイオセンサ |
研究実績の概要 |
1.光エネルギー移動反応の定量評価-マイクロ流路を用いたグラフェン表面のDNA2重鎖修飾 平成27年度までに、基板に転写したCVDグラフェンの表面をDNAアプタマで修飾する技術を確立し、グラフェンFRETアプタセンサへ応用してきた。平成28年度はこの技術を基に、基板に転写したCVDグラフェンの表面に、マイクロ流路を利用して2種以上の異なる鎖長のDNA2重鎖を修飾する手法の開発に取り組んだ。これは本研究課題の一つの柱となる、FRET効率の定量的な比較に向けた実験である。平成28年度は、あらかじめハイブリダイゼーションさせた鎖長の異なるDNA2重鎖(一端が-NH2、もう一端が色素分子で修飾されている)を、別々のマイクロ流路に導入してグラフェン表面を修飾する手法を試みた。現在までにマイクロ流路内のみにDNA2重鎖が修飾されることが確認できた。同時に複数のDNA2重鎖の蛍光強度の定量的な比較に対する問題点が明らかになった。その一つは蛍光強度が低いことである。この解決にはグラフェン表面へのDNA2重鎖修飾密度の改善が必要である。また、適切なグラフェン-色素間距離(DNA塩基数で調節可能)とフェルスター半径(色素分子の種類を変えることで調節可能)の組み合わせを選ぶ必要がある。 2.電子エネルギー移動反応 グラフェンのbasal plain と edge との電子移動反応の差異を、くし形電極を用いて区別する評価することを目的として、グラフェン加工電極の作製に引き続き取り組んだ。得られた電極の基礎的な電気化学特性を計測し、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度のはじめにグラフェンFRETアプタセンサの論文が受理・出版されたことを受け、各方面から講演や執筆の依頼を数多く受けた。本研究課題の成果が認知されつつあることの表れと言える。 その一方で、研究代表者が研究機関を異動(NTT物性科学基礎研究所から明星大学へ)したことに伴い、本研究課題を遂行するための実験環境が大きく変化した。新たな研究機関では実験室の構築や実験設備の整備が必要となった。これに伴い、実験の進行に遅れが生じたことは否めない。 そのような状況下ではあるものの、マイクロ流路を利用したDNA2重鎖修飾手法を新研究機関で立ち上げることができ、またグラフェンマイクロ電極の電気化学測定を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までに、転写グラフェンへ搭載したマイクロ流を用いて、グラフェン表面に異なる分子で修飾したパターンを作製することが可能となった。この技術を基に、平成29年度は以下の課題について引き続き実験研究を推進する。 1.光エネルギー移動反応の定量評価 2次元物質(グラフェン)と0次元物質(分子)との間に生じる光エネルギー移動反応機構の理解に向け、引き続き実験研究を継続する。当初計画の通り、グラフェンと蛍光分子との距離を2本鎖DNAを用いて制御し、FRET効率の距離依存性を定量的に評価する。定量的な評価に必須のマイクロ流路技術は上述のとおり確立できているので、2本鎖DNAをグラフェン表面に高密度に固定する技術がボトルネックと認識しており、この点を複数のアプローチを用いて解決していく。 2.電子エネルギー移動反応の構築と最適化 グラフェン表面での電子移動反応を電気化学的に検出し、評価する。1と同様に2本鎖DNAを用いてグラフェン-酸化還元種間の距離を制御して修飾することが鍵となる。そのため、1の課題である固定化技術に優先的に取り組み、その結果を本研究にフィードバックしていく計画とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術研究助成基金助成金の一部が繰り越しとなった。その額は軽微であり、平成28年度の研究の遂行に支障をきたすなどの影響はまったくない。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額は軽微であり、平成29年度の計画に影響を与えることはない。
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