研究課題/領域番号 |
26286020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西原 洋知 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80400430)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / ゼオライト / ヘテロ原子 / 電気化学キャパシタ / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
B, Nを豊富に含むイオン液体である1-Ethyl-3-methyl-imidazolium tetracyanoborateのゼオライトへの導入について検討した。ゼオライトのカチオンがH+である場合、イオン液体のカチオンの身が細孔内に導入され、アニオンが細孔内に導入されないことが判明した。しかし、ゼオライトのカチオンをNa+にすることで、カチオンとアニオンの両方を細孔内部に導入できた。しかも、ゼオライトの細孔容積のほぼ全てをイオン液体で満たすことができた。これを炭素化し、ゼオライトを除去したところ、炭素化収率が低く骨格が細いせいで高比表面積の炭素が得られなかった。そこで熱処理過程でアセチレンを流通させ化学蒸気堆積による炭素析出を行うことで骨格を強化したところ、比表面積が1500 m2/g、ホウ素含有量が3.2 wt%であるBN含有ゼオライト鋳型炭素が得られた。高比表面積と高ホウ素含有量を両立し、なおかつ長周期規則構造をもつ炭素材料はこれまでに例が無く、画期的な成果である。 また、ゼオライト鋳型炭素への電気化学的ヘテロ原子導入についても検討を行った。硫酸電解液中、比較的低電位で大量の酸素官能基を導入可能であり、この手法は機能化ゼオライト鋳型炭素の調製に有用である。そこでスペインのアリカンテ大学のCazorla教授のグループと共同でin situでの炭素構造変化について詳細な検討を行った。 さらに、ヘテロ原子を骨格に埋め込んだゼオライト鋳型炭素の合成のみならず、ゼオライト鋳型炭素のもつ1.2 nmの細孔内部へ異元素を含むナノ粒子・ナノクラスターを導入することによるヘテロ原子含有ゼオライト鋳型炭素の調製も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、イオン液体を原料としたヘテロ原子含有ゼオライト鋳型炭素の調製を目標としていたが、この目標はおおむね達成できた。イオン液体は粘性が高くその上極性が強いため、ゼオライト鋳型炭素への導入自体が困難であることが予想されたが、ゼオライトのカチオンを適切に選択し、真空含浸を行うことによりゼオライト細孔のほぼ全てを完璧にイオン液体で満たすことができた。また、熱処理の条件によってはイオン液体とゼオライトが反応して分解してしまうことが判明したが、アセチレンを原料とする化学蒸気堆積と熱処理を組み合わせ、なおかつ温度を最適化することで、この問題を回避した状態でゼオライト鋳型炭素が得られることを見出した。結果として、3.2 wt%ものホウ素を含有し、高比表面積であり、なおかつ長周期規則構造をもつBN含有ゼオライト鋳型炭素を調製することができた。ここまでは、概ね当初の計画通りである。 平成26年度にはさらに、他大学の研究グループと共同で、電気化学的修飾や含浸法など複数の他の方法を用いて、様々な異なる機能を持つヘテロ原子含有ゼオライト鋳型炭素の調製を行った。電気化学的修飾における炭素の基本的な構造変化について詳細な検討を行い、1報の論文を投稿できた。また、多元素を含むナノ粒子・ナノクラスターを含有するゼオライト鋳型炭素を調製でき、光触媒活性や水素化触媒能を持たせることに成功した。 このように、従来の計画は順調に進んでおり、さらに従来の計画を上回る成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の検討により、ホウ素を3.2 wt%含有し、1500 m2/gの比表面積を有し、なおかつ長周期規則構造をもつ異元素含有ゼオライト鋳型炭素の調製に成功した。しかし、ゼオライト鋳型炭素の比表面積は最大で4000 m2/gであるため、これをさらに増大できる可能性がある。そこで今後は、試料の調製条件を最適化し、比表面積のさらなる増加を目指す。また、調製した試料の電気化学キャパシタ特性や酸素還元活性の評価を行う。 平成26年度は電気化学的修飾に関する基礎的検討を行い、この手法も異元素含有ゼオライト鋳型炭素の調製に有用であることを見出している。そこで今後は、電気化学的修飾による異元素含有ゼオライト鋳型炭素の調製と、電気化学キャパシタへの応用に関しても検討を行う。エネルギー密度の観点から、有機電解液を用いる方が有利であるため、有機電解液中での異元素ドープおよび疑似容量の発現について、詳細な検討を行う予定である。 ゼオライト鋳型炭素細孔内部への異元素含有ナノ粒子・ナノクラスター導入についても、平成26年度に面白い結果が得られているので引き続き検討を行う。さらに、有機化学的手法を用いたエッジ修飾による異元素ドープについても検討を行う。 以上のように、当初計画していたイオン液体を原料とする合成ルートのみに限らず、電気化学的修飾、有機化学的修飾、ナノ粒子・ナノクラスター導入などより幅広い方法論を適用し、様々な機能をもつ異元素含有ゼオライト鋳型炭素を調製し、それぞれの機能を生かした応用検討を行う予定である。
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