研究実績の概要 |
H28年度は、昨年度合成に成功したBN含有ゼオライト鋳型炭素のXPSや電子顕微鏡による構造解析を進めた。XPSによる分析から、Bの存在形態としてBC3, BC2O, BCO2, BNが主たるものであり、酸化型(BO3)は殆ど存在しないことが明らかとなった。また電子顕微鏡観察からゼオライトに由来する規則構造の維持が確認された。BN含有ゼオライト鋳型炭素において確認された電気化学キャパシタの疑似容量へのB含有官能基の寄与を調べるため、ポスト修飾によりBCO2のみを大量にドープしたゼオライト鋳型炭素を調製して検討を行った結果、BCO2基は疑似容量に関与しないことが明らかになった。すなわち、BN含有ゼオライト鋳型炭素の疑似容量の起源はBC3, BC2O, BNのいずれかであることが明らかとなった。ホウ素含有炭素の疑似容量の起源については従来は曖昧にしか理解されてこなかったが、今回の検討で該当する部位を絞り込むことができた。しかしながら、BN含有ゼオライト鋳型炭素の疑似容量はNのみを含有するゼオライト鋳型炭素には及ばないことがわかった。電気化学キャパシタの疑似容量増加の方法として、BNドープがNドープよりも優れているとする論文が複数報告されているが、少なくともゼオライト鋳型炭素の場合にはNドープのみの方が有利であることがわかった。 ゼオライト鋳型炭素および一般の炭素材料のエッジサイトの電気化学的な反応性に関する基礎検討も進めた結果、電気化学キャパシタにおける酸化劣化の原因の1つが水素終端エッジサイトであることを実験的に明らかにした。この知見を利用すれば、安価な活性炭に簡単な処理を施すことで高耐久性のキャパシタ電極を作製することが可能となる。 一方、BN含有ゼオライト鋳型炭素の酸素還元活性を評価した結果、Nのみを含有する試料より活性が高いことが示された。今後、触媒としての利用が期待される。
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