平成28年度は、方位配向Au/Coナノ粒子の磁性評価とAuシェル構造の熱的安定性の検討を行った。まず、磁気特性をSQUID磁束計を用いて評価したところ、いずれの試料も室温で強磁性を示した。測定は試料薄膜面内に磁場を印加して行った。保磁力はCoシェル粒子(平均粒径13 nm)では、300 Kで10 Oe、10 Kで350 Oeであった。一方、Auシェル粒子(平均粒径11 nm)では、300 Kで20 Oe、10 Kで630 Oeとなり、低温で比較的高い値を示した。粒径減少とともに保磁力は減少し、また、磁化の温度依存性(ZFCFC曲線)に現れるブロック温度(TB)が220 K (粒径11 nm)から40 K(8 nm)に減少した。これは粒径減少に伴い、Auシェル粒子の割合が増加することにより、Coコアのサイズが減少することに起因すると考えられる。熱処理(800 K)により保磁力はわずかに増加する傾向がみられたが、これは熱処理に伴う粒径の微増によると考えられる。AuとCoの積層順序による磁気特性の相違は見られなかった。以上の結果、Au/Coナノ粒子は室温で軟磁気特性を示すことが判明した。 電子顕微鏡内加熱その場観察の結果、800 Kでの熱処理後においてもAuシェル構造が保持されるものの、一部の粒径が比較的大きい楕円形状粒子(>10 nm)では、AuとCoに相分離することが判明した。この結果は、電気炉での熱処理と同様の傾向であり、Auシェルは微細な粒子において安定であり、その熱的安定性が粒径に依存することを示している。詳細なSTEM観察の結果、本研究で作製したナノ粒子におけるAu/Co界面は、そのほとんどが整合もしくは部分整合であった。
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