研究課題/領域番号 |
26286022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八井 崇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80505248)
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研究分担者 |
竹内 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10357402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近接場光 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
近接場光の持つ非一様性の特長を最大限に活用し、高効率に二酸化炭素を分解する材料開発を目指している。二酸化炭素の分解には波長160nm以下の深紫外光が必要となるため、分解が困難であり地球温暖化の大きな要因となっている。近年より長波長光での分解を行うために、可視光に吸収を持つRu-Re錯体が用いられている。この材料においてRuによって光を吸収し、Ruに励起された電子をReに渡すことで、二酸化炭素の還元を行う。本研究ではさらなる二酸化炭素還元効率向上を目指し、二酸化炭素還元を実証する前に、近接場光によって錯体の吸収スペクトルの長波長化が発生することを実証した。 具体的には、まず酸化亜鉛ナノ構造として、酸化亜鉛ナノ微粒子を作製した。次に、この酸化亜鉛ナノ微粒子に対してReビピリジン錯体(Re(bpy-COOH))を化学吸着させた。得られた材料に対して吸収スペクトルを測定したところ、酸化亜鉛ナノ微粒子がない場合と比較して吸収スペクトルが長波長シフトすることを確認した。さらに、酸化亜鉛ナノ微粒子の表面ナノ構造が多い微粒子において、より長波長シフトを確認したことから、吸収スペクトルの長波長シフトが近接場光による効果であることが確認できた。これは、近接場光によって励起可能となったRe錯体の中間準位を介した多段階遷移による効果であると推測される。 今回見られた錯体の吸収スペクトルの長波長化はRu-Re錯体とした場合でも同様の効果が得られると考えられることから、二酸化炭素還元の高効率化が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に記載の通り、ナノ構造の割合の多い構造体において、より強い近接場光効果を確認することができた。これらの結果は、近接場光の非一様性の理論より妥当な結果であり、今後より制御性の高い酸化亜鉛ナノロッドによってさらに強い近接場光効果を発生させるための構造作製に有益な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
酸化亜鉛ナノロッド合成によって更なる近接場光効果の増大を狙うとともに、最終的な目標である二酸化炭素還元の最適化を目指す。また、酸化亜鉛中での電子励起の影響を明らかにするために、シリカ球など光吸収を伴わないナノ構造を用いた同様な実験を行うことで、近接場光効果の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を予定したZnOナノロッドの合成装置が故障した。現在修理は完了し、次年度にナノロッドを作製して統計的なデータを取得し、質の高い研究としてまとめることが最善と考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
週一回勤務可能な組成分析担当者を雇用する。また、成果の集大成として国際会議、学術論文投稿など外部発表に関わる経費の使用を予定している。
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