研究課題/領域番号 |
26286023
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
石橋 隆幸 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20272635)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ円偏光 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年注目を集めている近接場光を利用したナノ領域におけるフォトニクスに円偏光の生成と計測技術を組み合わせた、これまでにない新しいナノフォトニクス技術の開発を目的とする。具体的には、ナノサイズの円偏光を生成するプローブ(ナノ円偏光プローブ)を電磁界シミュレーションを基に設計し、微細加工技術を駆使することによって、10 nmの空間分解能を有する円偏光計測技術を開発するものである。 平成27年度は、平成26年度に考案したナノサイズのアパーチャーとV型溝構造を組み合わせた新しいアパーチャー構造の作製を行った。金薄膜上に集束イオンビームを用いて、V溝アパーチャー構造を作製した。Gaイオンビームを直線上に交差させて描くことによって、長さがサブミクロンのV溝の形成とともに、交差部分にナノサイズのアパーチャーを形成することに成功した。また、近接場顕微鏡を用いて、作製したアパーチャー表面における電場の評価を行った。その結果、V溝の底の部分にチャネルプラズモンポラリトンによるものと思われる強い電場が観測されたことに加え、アパーチャー付近にはさらに強い電場が観察された。この電場分布は、電磁界シミュレーションによる結果と良く一致した。この結果は、本研究で提案したV型溝アパーチャー構造がナノサイズの円偏光光源としての可能性を示唆するものである。 次に、V型溝構造を近接場顕微鏡の光プローブに適用するために2種類のプローブを検討した。一つは、金でできプローブ上にV溝構造を設けたものである。もう一つは、金で被服した窒化シリコン製の原子間力顕微鏡用プローブにV溝構造を設けたタイプのものである。シミュレーションにより検討した結果、いずれの場合にもプローブ先端にナノサイズの円偏光を生成可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度までに、予定していたナノサイズ円偏光を生成するためのプローブの提案を行うことができた。そして、評価に取りかかっており、本研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成28年度は、これまでに提案および試作したプローブを用いた走査型近接場光学顕微鏡における円偏光測定の実証実験を行う。そして、超短パルス光を使用した場合のSNOMによるその後、ポンプ-プローブ法の光学系を構築し、10 nmの空間分解能かつピコ秒、ナノ秒の時間分解能で磁化過程を測定する技術を構築するとともに、パルスによる誘起される磁化変化について詳細に調べる。試料については、GdFe、PtCo多層膜などの磁気光学材料を100 nm 程度の大きさにパターニングしたものを用いる。最終的には、実際のTMR素子やGMR素子などについて磁化過程の評価およびスピン操作の可能性について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は、シミュレーションによるナノ円偏光プローブの設計及び最適構造の検討に重点を置いた。そのため、ナノ円偏光プローブの作製は試作にとどまっていたため、プローブ作製費用はH28年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に考案したナノ円偏光プローブの作製に注力する。特に、ナノ円偏光プローブの作製は、本研究機関に設置されている集束イオンビーム装置により作製するが、ナノサイズにおけるより正確な加工のために、外部機関への委託も実施する。その後、作製したナノ円偏光プローブを用いて、ナノ領域における磁気円二色性の測定を実施する。具体的には、パーマロイ薄膜や磁性体微細構などにおける強磁性薄膜の磁区構造を用いて動作確認と空間分解能および磁気感度の 評価を行う。そして、最終的には、ナノ円偏光プローブによるナノ領域のスピン操作に関する実験を行い、微小磁性体だけではなくトンネル磁気抵抗効果素子(TMR)や巨大磁気抵抗効果素子(GMR)などのスピントロニック素子における磁化過程計測技術の基礎を構築する。
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