研究課題/領域番号 |
26286024
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平原 佳織 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40422795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロバブル |
研究実績の概要 |
平成27年度は、1. カーボンナノチューブ(CNT)電極シートの最適形状探索を含めた作製方法の検討、2. 気泡配列構造の制御方法の検討、3. 作製した微小発生源の機能開拓および活用法探索を行う計画であった。 1. CNT電極シートの改良:昨年度からCNTをPDMS樹脂に埋め込む構造を採用していたが、発生させた個々の気泡の原子間力顕微鏡(AFM)観察を詳細に行うにつれ、PDMS固化時の収縮によりCNT周辺が突起状の起伏を有することが、均一サイズの気泡保持を困難にする一因となったり、気泡の保持位置が突起の形状によって発生位置からずれることが確かめられた。このことからCNTが突出している部分周辺がより平坦になる作製法の再検討を行い、CNT埋め込みに用いる樹脂をPDMSに変更することとした結果、目的とするレベルの表面構造を得た。この見直しに伴い電極接続方法などの改良が必要となったものの、当初の計画時に想定していた形状の電極シートが完成できる見通しを得た。 2. 気泡配列制御:ストライプ状にパターニングした触媒を用いたパターニングCNT合成などを実施し、次年度のパターニング電極作製の準備を整えた。 3. 微小発生源の機能開拓および活用法探索:当初は微小流路内の流れ制御などを計画していたが、フラットなシート表面を作製できる準備が十分整ってから来年度検討することとした。一方、研究成果の外部発表において議論を重ねながら、気泡-水界面の情報、気泡発生サイトとなるCNTが1本レベルで水に対しどのように濡れるか、気泡1個がどれほどの力で発生した基板に吸着しているか、などをナノスケールで調べるために本研究で開発しているデバイスは有用であるとの確信を得たことから、作製した電極シートのAFM観察や気泡1個レベルの力計測、CNT1本レベルの濡れ観測などを行い、これらに関する基礎的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気泡配列制御については、当初の計画では昨年度得られた知見をもとに電極シート開発などと並行して行う予定であったが、研究を進めていくに従い、この項目を遂行するためにもCNTが突出している電極表面ができるだけフラットであることが望ましいという結論となった。そのため、作製方法の見直しををまず重点的に取り組んだ後、安定したデバイス作製工程に基づいて取り組んでいく方が、研究期間全体の流れを考えれば最も現実的かつ有益であると判断し、この項目を次年度に持ち越して取り組むこととした。ただし、今年度のうちに基礎技術の準備は終了している。また、電極改良に当初の計画より時間を要したものの、Siウェハ表面をそのまま反映したレベルの平坦な表面を有する電極シートが作製できるにいたり、次年度予定するデバイス作製にとっては結果として近道になったと言える。 また、実施概要の項目3においては、当初は今年度よりアプリケーション開発を想定していたが、作製した電極シートを活用して気泡1個の物性を詳細に調べることに軸足を置いた。これによって、微小な気泡1個レベルの、もしくはナノメートルレベルの濡れに関する科学を実験により詳細に理解していくためのアプローチに本研究の微小気泡発生機構が有用であることが示され、より学術的に意義深い成果が見込まれる。また、これらの情報は、次年度行うこととした、電極表面の選択的位置に保持できる気泡の活用法を探索するにあたっては基盤的な役割を果たす。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画は、最終年度であるH28年度には機能開拓・応用探索とそれに必要な基礎知見の蓄積を中心としていた。基本的にはそれに従って研究を進める予定である。ただし、27年度に予定していた研究内容をいくつか変更したため、それを考慮した研究計画を立案する。 また、これまでに得られた知見から、下記の点についての検討を含める必要があると考えられる。 ・電極シートは今年度まででおおむね完成しているが、樹脂の種類を変更すると電極の接続方法を変更する必要があることが分かった。この点について検討する。また、フラットなシートを作製できるようになったことは、個々のCNTから発生させる気泡を均一に保持できる可能性を高めた一方で、気泡がエポキシ樹脂表面に吸着することを意味することから、気泡サイズと形状の相関や、樹脂表面の撥水加工などによる気泡形態制御など次年度計画中に検討項目となる。 ・パターニング電極シートを樹脂包埋する際のパターン形状の保持については、引き続き検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗に応じた計画の再構成にともなって、MEMS流路における流れ観測を次年度行うこととしたため、その試料作製のための必要経費を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
CNT電極シート作製に必要な材料費の追加購入を行う。主に、Si基板や電極材料(シルバーペースト)を予定する。
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