研究課題/領域番号 |
26286025
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
渡邊 賢司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (20343840)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 結晶工学 / 格子欠陥 / 半導体超微細化 |
研究実績の概要 |
本研究はグラフェンや遷移金属カルコゲナイド2次元結晶などの原子層物質を応用した電子デバイスのための基板技術を提供することを目的とする。原子層絶縁性基板として実績のある六方晶窒化ホウ素(h-BN)単結晶を、量産化に有利な化学気相成長法により得るために成長用基板の探索を行い、最適成長条件を調え高配向性h-BN膜を得ることにより機能性原子層材料と六方晶窒化ホウ素基板間相互作用による諸特性のゆらぎを改善する。2015年度は以下の点について研究を進めた。 1. ホモエピタキシャル成長による基板の高品質化:高圧法高純度h-BNを種結晶としたホモエピタキシャル成長による大面積・高品質化の可能性を検討した。成長膜の評価は基板との区別が難しいが、共焦点光学系顕微ラマン散乱分光法によるマッピング技術を用い成長層の結晶性を評価できることがわかった。h-BN成長膜のラマンモードの半値幅は基板よりも狭く積層欠陥の低減を示唆している。 2. 紫外発光顕微鏡の開発:高圧法による結晶基板に存在する不純物セクターの気相成長への影響は未評価である。成長セクターは発光像により確認できるが、従来の電子線励起では試料の帯電により表面汚染が生じた。そこで帯電汚染の少ない光励起による発光顕微鏡を新たに開発し、紫外対応高感度CCDカメラにより発光像のみを効率よく取得できるシステムを完成した。 3. ラマン散乱分光法によるウルツ鉱型BNの欠陥評価:BNの多形のうち準安定相のウルツ鉱型BN(w-BN)の研究例はほとんどない。w-BNは新超硬物質としての報告例があるのみならず新しい基板材料として興味深い。そこで、高純度h-BNから直接相変換を試み、マルテンサイト変態による特有の欠陥状態を顕微ラマン分光法にて調べ結晶性を評価した。 〔連携研究者〕物質・材料研究機構・谷口尚・高純度六方晶窒化ホウ素のバルク結晶の育成技術開発
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
六方晶窒化ホウ素の熱CVD成長法においては高温成長条件が必須であり、赤外レーザ加熱により高温条件を達成しているが、昨年度に報告した通り自作基板加熱部品の熱損傷により一定の修理期間が必要であった。さらに成長装置へのダメージを詳しく調査した結果、赤外レーザを導入する窓の損傷が著しいことがわかりその対応で時間がとられた。この窓の成長時の破損は半導体材料ガスの漏洩事故につながるので慎重に対応する必要があり、窓の定期的なクリーニングのみならずクリーニング技術の確立も必要であった。現在は、装置運用上問題となる案件はクリアされており、安全に研究を遂行できる態勢にある。
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今後の研究の推進方策 |
高圧法により得られた高純度六方晶窒化ホウ素を種結晶としたホモエピタキシャル成長による基板の大面積化の可能性を探るためにラテラル(横方向)成長する成長条件の探索を目指す。現状のホモエピタキシャル成長の面内方向の成長はそれほど速くなく、c軸方向の成長が0.5μm/hほどの成長速度を持っているのに比較すると桁違いに遅い。これはサファイア基板に保持された高圧法単結晶六方晶窒化ホウ素の周囲にサファイア基板上に直接成長した多結晶六方晶窒化ホウ素が原料ガスを高速に取り込んでしまうことと、ラテラル成長のための成長条件の最適化が実現できていないためであると考えている。そこでラテラル成長を促進するために六方晶窒化ホウ素の成長が阻害されるようなh-BN支持のための基板を探索する。一方においてラテラル成長とともに重要なのがステップフロー成長モードである。ステップフローモードを実現することにより高品質・低欠陥の六方晶窒化ホウ素薄膜を得ることができる。そのためには、なによりも原料ガス濃度と成長温度の最適化が非常に重要である。ホモエピタキシャル成長での条件を考慮しつつ、ホウ素および窒素源のガス比や基板温度などに十分注意してステップフローモードの実現を目指す。 また、高圧法で成長した単結晶における不純物濃度の高い成長セクターがホモエピタキシャル成長に及ぼす影響について昨年度に開発した紫外発光顕微鏡により評価を行う。得られた結果を解析検討し、成長条件の最適化に役立てるのみならず、一連の結果を国内および国際会議で発表する。
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