本研究はグラフェンや遷移金属カルコゲナイド2次元結晶などの原子層物質を応用した電子デバイスのための基板技術を提供することを目的とする。原子層絶縁性基板として実績のある六方晶窒化ホウ素(h-BN)単結晶を、量産化に有利な化学気相成長法により得るために成長用基板の探索を行い、最適成長条件を調え高配向性h-BN膜を得ることにより機能性原子層材料と六方晶窒化ホウ素基板間相互作用による諸特性のゆらぎを改善する。2016年度は昨年度に引き続き、ホモエピタキシャル成長による基板の高品質化を目指し。高圧法高純度h-BNを種結晶としたホモエピタキシャル成長による大面積・高品質化の可能性を検討した。また、昨年度新規開発した共焦点光学系ラマン散乱マッピング分光法および紫外発光顕微鏡による発光分光法により成長膜の評価を行った。成長膜の評価は、薄膜ゆえに基板との区別が難しいが、共焦点光学系顕微ラマン散乱分光法によるマッピング技術を用い成長層の結晶性を評価できる。h-BN成長膜のラマンモードの半値幅は基板よりも狭く積層欠陥の低減を示唆している。一方、紫外発光スペクトルは、結晶性の向上を示す幅狭い自己束縛励起子発光(215nm)を示すが、一方において炭素・酸素不純物に由来すると思われるブロードな不純物由来の発光も見られた。成長中の不純物の取り込みを評価する目的で成長装置にガス分析装置を取り付け、炭素由来の汚染を確認したので、成長装置内の不純物ガスの低減を図った。その結果、不純物発光レベルは高圧法による単結晶と同等となり、高品位h-BN薄膜結晶成長を達成した。
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