研究課題/領域番号 |
26286033
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 潔 東京大学, IRT研究機構, 教授 (10282675)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MEMS / NEMS |
研究実績の概要 |
本研究は、基板内の誘電率分布を場所ごとに変えることによって、透過する電磁波の波面を制御可能なデバイスを実現することを目的としている。 本年度は、基板内の誘電率分布を変動する方法として、テフロン基板上に形成した貫通流路内の液体の有無を制御する貫通流路型液体アクチュエータを提案、試作するとともに、流路形状と変形速度の関係を評価した。アクチュエータは、流路上に形成した電極にシリコーンオイルを滴下した後、オイルをパリレン膜で封止し、またパリレン膜上に電極を形成した。この構造は、オイル下の電極-パリレン膜上の電極間に静電気力を印加することで、液体を流路外に押し出し、また静電気力を除荷した場合には、液体の表面張力によって初期形状に復元する。液体にはテフロン基板(ε=2.8)と誘電率が同等のシリコーンオイル(ε=2.2)を使用した。貫通流路の長さをアクチュエータ厚みより十分長くすることで、流路内に液体を詰めた場合と流路外に液体がある場合とで、基板を通過する電磁波に影響する誘電体膜厚を変化する。 試作したデバイスでは、直径200μmから直径1.6mmまでの液体流路を形成し、その上部に直径10mm、厚み100μmの液体アクチュエータを形成した。その変形・復元速度が開口面積の増加に伴って早くなることを確認した。また直径400μmの流路を複数アクチュエータ内に配置した場合に、アクチュエータの配置位置を中心に置いた場合には、変形速度が、外縁部に配置した場合には復元速度が向上することを確認した。 また、ラージスケールモデルとして、長さ6mm、直径2.5mmの流路内に液体が入出した場合に24GHzのミリ波に対して干渉が起きることを有限要素法解析によって検証した。また、デバイスを透過後の電磁波の形状から、その形状を実現するために最適な面内誘電率の分布を演算する計算アルゴリズムを試作・検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にデバイスを試作して液体アクチュエータの動作確認を行い、変形・復元速度が開口面積の増加に伴って早くなること、またアクチュエータを中心に置いた場合には変形速度が、外縁部に置いた場合には復元速度が向上することが確認できた。 ミリ波領域の電磁波に対する作用については、有限要素法解析によって検証を行い、透過後の電磁波の形状から、それを実現するための面内誘電率分布を演算する計算アルゴリズムを構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
複数の液体アクチュエータの高さを計測して制御するため、液体の高さ・偏りを検出する手法を実現する。また材料起因の損失が電磁波の放射特性・変調特性に与える影響を検証するとともに、材料の探索に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究関連で投稿していた国際学会が、残念ながら不採択となったため、おおよそ旅費分が次年度へと繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は物品費に充当し、液体アクチュエータの開発を加速するために有効に活用する。
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