本研究は、基板内の誘電率分布を場所ごとに変えることによって、透過する電磁波の波面を制御可能なデバイスを実現することを目的としている。電磁波が基板を通過するとき、基板の誘電率によって伝播速度が変化する。基板内の誘電率分布を制御できれば、電磁波の通過場所ごとに任意に位相差を生み出し、干渉によって波面形状を変形できる。 本年度は、前年度に引き続き、電磁波波面形状の制御をより精密に行うことが可能な液体アクチュエータの配置方法を確立するためのアクチュエータ配置方法並びに任意波面を実現するためのアクチュエータの制御則の実現に取り組んだ。さらに誘電率分布により電磁波波面の制御が可能か確認するために、実機モデルによる検証実験を行った。 実験は2次元モデルでの検証とした。平面状の誘電体内に、送信、受信アンテナを設置した。アンテナ間の誘電体部分に波面を制御するための濃淡パタンを形成し、受信アンテナの位置を変えながら、送信、受信アンテナ間の伝達特性を計測した。その結果、濃淡パタンにより電磁波波面の偏向、収束が可能であることを確認した。 本デバイスによる波面制御の発展的な課題として、電磁波波面だけではなく、音波のような物質波の制御への応用を目指し、液中の音源から発振した超音波を計測する超音波レンズに関する研究に取り組んだ。さらに、本デバイスのテラヘルツ領域への展開を見据えて、表面プラズモン共鳴を用いたテラヘルツ帯受信デバイスの研究にも取り組んだ。
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