本研究では,現代医学で未解明の領域とされている末梢気道での呼気吸気特性を解明することを目的として,世界に先駆けて末梢気道でのその場計測評価技術の確立を目指した.具体的には以下の研究課題を克服した. (1)チューブ型気流センサデバイスの特性評価:前年度に開発したチューブ型気流センサデバイスの動作特性を計測評価した.具体的には,センサ出力と流量との関係を計測評価し,呼吸計測に対して十分な仕様を有することを確認した.また,呼吸周期に対して十分な応答性(30 ms以下)を有していることを確認した. (2)チューブ型気流センサデバイスのシステム化技術:チューブ型気流センサデバイスと医療用ツールとのシステム化について検討した.具体的には,チューブ型気流センサデバイスの内側空間に医療用可視化細径プローブを組込み,これにより管内でのその場観察を可能にした.そして,次にチューブ型気流センサデバイスの内側空間に医療用バスケット鉗子を挿入し,これにより管内での気流センサの位置決め固定を可能にした. (3) 気流センサの応用展開の検討:前年度に引続き,気道内気流計測による呼吸・心拍同時計測の可能性を追求した.具体的には,気道内気流波形に対して,周波数解析を適用することで,気道内気流に含まれる呼吸情報と心拍情報とを分離抽出する条件を見出した. (4) 動物実験による実証(医学的データの蓄積):気流センサデバイス・システムによる動物実験を行い,本計測手法の有用性を実証する医学的データを蓄積した.また,ラビットを用いた動物実験にて新たに開発した上記プローブ実装型気流センサシステムにて,ラビットの気道内でのその場計測が可能である見通しを得た.なお,動物実験については,呼吸器内科を専門とする川部教授(医学部,研究分担者)が担当し,実験は動物実験の設備が整っている名古屋大学医学部にて実施した.
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