研究課題/領域番号 |
26286036
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
手束 展規 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40323076)
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研究分担者 |
斉藤 好昭 株式会社東芝, 研究開発センター, 研究主幹 (80393859)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピントロニクス / スピンシグナル / 磁気抵抗効果 |
研究実績の概要 |
EB描画装置を用いて作製した微細素子の作製技術の開発、および、そのスピン伝導解析を行った。強磁性体間距離を100nm~10000nmの間で変化させた試料を作製した結果、500nm~10000nmの間でスピンシグナルの増加は確認できたが、500nm以下の素子で、スピンシグナルが素子サイズの縮小とともに減少する異常な振る舞いが観測された。また250nm以下では磁性体間がショートし、通常のプロセスで、イオンミリングで加工することが困難であることが判明した。そこで、強磁性体間距離100nmでも原理的にスピン信号が観測可能と考えられる、ダミーGateを最初に作製する新しいプロセスを考案し、その条件出しを進めた。現在、考案した新しいプロセスにおいてもスピン信号は観測できるようになったが、500nm以下の素子で、スピンシグナルが素子サイズの縮小とともに減少する異常な振る舞いは同様に観測され、この要因が磁性体間のリデポの影響ではないことが判明した。 また、半導体上に強磁性トンネル接合の作製を試みた。GaAs基板上では、格子整合性が良いため、MgOを絶縁層をとする強磁性トンネル接合の膜構造をエピタキシャルに世知よう出来ることを確認した。Si基板上では、強磁性トンネル接合とSi基板間にMgO層を挿入することにより、エピタキシャル成長した強磁性トンネル接合を作製することに成功した。今後は、これらの強磁性トンネル接合の電気伝導・磁気抵抗効果の観測を目指した実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極短チャネル長の素子作製に成功し、500nm~10000nmの間でスピンシグナルの増加は確認できたが、500nm以下の素子でのスピンシグナルの減少について、検討が必要であるため。また、半導体上にエピタキシャル強磁性トンネル接合の作製に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
500nm以下の素子でのスピンシグナルの減少について要因を調べるために、断面TEM解析を行った。その結果、ダミーGateをRIEで加工した後フッ酸処理を行い作製したSi/MgO/強磁性界面に大きな荒れが存在することが判明した。これは、ダミーGateをスパッタSiOxで作製したが、そのSi/SiOx界面に荒れが生じたことに起因していると考えられる。少なくとも、ダミーGateを熱酸化法で作製するなどのプロセスのチューニングを行う必要があると考えられる。また、その他の要因が無いかどうか、スピン信号の温度依存性などを詳細に解析し、素子構造ならびに素子作製過程のプロセスチューニングの是非を検討する。これらプロセスのチューニング行い、微細素子においても、良好なSi/強磁性体界面を作製できる界面制御技術を確立する。 半導体上の強磁性トンネル接合の磁気抵抗効果の観測を目指す。従来のトンネル磁気抵抗効果の実験と同様な測定配置の場合と、半導体を介した磁気抵抗効果の実験との両方を行う。Si基板上での作製の場合、半導体と強磁性トンネル接合の間にMgO層を挿入する必要があったが、この膜厚を薄くできるように条件だしを行う。この膜厚により、強磁性トンネル接合自体の磁気抵抗効果がどのように影響されるかを明らかにするとともに、半導体/強磁性トンネル接合の界面抵抗と強磁性トンネル接合の絶縁抵抗との組み合わせにより、半導体を介した磁気抵抗効果がどのように変化するか調べる。
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