研究課題
プリンテッドエレクトロニクスが志向するフレキシブル基材は、総じて熱に弱いものであるにもかかわらず、100 °C以上の高温焼成を何度も要するプロセスが一般的に用いられている。PET、PEN等のプラスチック基板は100 °Cでも激しく伸縮するため、現状の印刷エレクトロニクスは高精細のデバイス製造には適さない。それに対して、申請者が提唱するのは「室温プリンテッドエレクトロニクス」である。申請者は、ソース・ドレイン電極、半導体層、ゲート電極のすべてを大気下・室温における印刷プロセスでパターニングした完全室温印刷有機トランジスタを実現した。すべての製造プロセスを常温印刷で行う室温プリンテッドエレクトロニクスによって、フレキシブル基材の伸縮の影響を受けない高精度の素子作製が可能になる。平成26年度は、印刷有機トランジスタ素子のさらなる微細化を目指して、線幅/線間をそれぞれ1umまで細線化可能な超微細印刷技術を開発した。この技術を用いて、チャネル長1umの短チャネル有機トランジスタを、室温印刷プロセスによって初めて形成することに成功した。現在は、特性向上のため電極/半導体界面の制御に取り組んでいる。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画においては、平成26年度中に常温印刷による有機トランジスタのチャネル長を10um以下まで微細化する計画であった。しかし、印刷による電極の微細化技術に飛躍的な進展があり、当初計画の1/10の精細度となるチャネル長1umの有機トランジスタを実現した。平成27年度には、チャネル長をサブミクロンまで微細化した有機トランジスタの形成も視野に入れている。線幅/線間の長さが1umを切るような細線は、フォトリソグラフィーを用いても作製することは難しく、現在の素子製造技術の限界を塗り替えるほどの大きな成果である。
現状の印刷有機トランジスタでは、電極/半導体界面の接触抵抗が課題である。特にチャネル長が10um以下の場合では、チャネル抵抗よりもコンタクト抵抗が支配的となっており、有機トランジスタのさらなる微細化や安定動作の妨げとなっている。接触抵抗の低減には、金属/半導体界面へのドーピングによるキャリア増加が有効である。現在は、ラジカル重合開始剤やエッチング剤としてもちいられる塩化鉄といった様々なアクセプター性の材料を、電極界面に選択的にドーピングする実験を行っている。これらの界面ドーピング技術を実現することによって、短チャネル有機トランジスタの安定動作と特性向上を実現する。
使用期限のある薬品の購入を次年度に回したため。
今年度に薬品を購入する。
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