研究課題/領域番号 |
26286042
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 勇介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90252618)
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研究分担者 |
吉川 洋史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50551173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶多形 / レーザー誘起核発生 / キャビテーションバブル / 有機低分子 / タンパク質結晶 |
研究実績の概要 |
モデル物質であるインドメタシンおよびアセトアミノフェンの過飽和溶液において、溶液へのレーザー集光位置によって溶液中に起こる物理的な変化が異なることを確認した。両物質において容器中央部にレーザー照射をした場合、発生するキャビテーションバブルは膨張・収縮を繰り返して崩壊する。この崩壊時に気泡が多数発生し、気液界面に上昇するが、気液界面ではこの気泡の維持時間が短く、数分後には消滅してしまった。一方、容器壁面近傍にレーザー照射を行った場合、発生したキャビテーションバブルは壁面に向かって衝突して崩壊し、やはり多数の気泡を生じる。これらの気泡は壁面を伝って溶液のメニスカス部分に上昇し、この位置で長時間安定に滞在することが分かった。その後の詳細観察により、インドメタシンおよびアセトアミノフェンどちらにおいても、この残留気泡部分から結晶が晶出していることが明らかになった。 レーザー照射で発生した残留気泡部分は、気、固、液界面であり、溶媒の蒸発が効果的に起こるため局所的な高過飽和状態になり、ここから結晶が晶出する。晶出した結晶自体が、次の結晶核発生のきかっけになり、最初の準安定相核形成から比較的短い時間で次々に準安定相の核発生および成長が起こる。この場合、安定相の結晶化が起こる頃には溶液の過飽和度が低下しており、安定相は核発生できなかったと考えている。 顕微鏡で準安定相のみが観察される場に1つの安定相を意図的に混入させると24時間で全て安定相に変わることが明らかになった。このこともまた、本手法では、安定相の混入が無い極めて高い純度の準安定相が得られていることを示唆する。 また、キャビテーションの新たな発生方法として、アセトアミノフェン過飽和溶液に超音波印加を行ったところ、28kHzの印加条件において、準安定相が100%の確率で得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成27~28年度に行うことを予定していた超音波導入によるキャビテーションバブルを用いた多形制御を前倒しで行い、溶液の過飽和度と超音波の周波数を最適化することで、100%準安定相が得られることが明らかになった。一方で、フェムト秒レーザー照射と容器形状の関係性についてはまだ明確な進展が見られていないため、上記評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の実験結果から、キャビテーションバブル崩壊後の残留気泡の存在が準安定相の核形成を促す場であることが明らかになったため、この残留気泡の長寿化を実現する技術の研究開発に力を入れる。また、系の大型化を見据えた超音波印加による多形制御が効果的であることが明らかになったため、より大きな容器などを用いて系の大型化及び効率化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26度は超音波導入によるキャビテーションバブルを用いた多形制御を前倒しで行い良好な結果を得た。しかしその結果、当初レーザー実験の光学部品や特注容器などに使用予定であった基金分予算に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27~28年度において、上記の光学部品や特注容器などのために使用する予定である。
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