研究課題/領域番号 |
26286045
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エピタキシャル / トンネル現象 / 誘電体物性 / 半導体物性 |
研究実績の概要 |
ワイドギャップ半導体における高効率正孔注入に向けた以下の三つに関して、今年度得られた成果を以下に記す。 (1)トンネル接合:深紫外LED用AlNテンプレート上のトンネル接合に関して、3nm GaNトンネル接合構造を設計・作製した。その結果、AlGaN上には良好なGaN薄膜が形成できていないことが判明し、結晶成長から再度最適化する必要があることが判明した。一方、紫外面発光レーザ用GaNテンプレート上のトンネル接合では、GaInNトンネル層に組成傾斜を取り入れることで、これまで課題であった高電流注入時の大きな電圧降下が解消され、従来のpコンタクトと同等の低い抵抗を有するGaInNトンネル接合が実現した。これにより、MOCVD法で作製された窒化物半導体によるトンネル接合として、現時点で世界最小の抵抗値(2e-4 Ωcm-2)を達成している。 (2)巨大分極利用:Gaを適量添加することで良好な表面・結晶性を有するAlNテンプレートが低温で形成可能なことを明らかにした。さらに高Al組成AlGaN/AlNヘテロ接合における巨大分極に蓄積する高濃度正孔の検証を行い、再現性が低いものの、理論的に予想される高い濃度(4e13cm-2)の正孔が蓄積できていることを明らかにした。 (3)価電子帯制御:GaNSbがn型を示す理由は元素分析より残留酸素によるものであると判断した。様々な成長条件でGaNSbを結晶成長させたが、アンドープでは依然として18乗近いn型を示すことが判明した。さらに、Nサイトに置換されたSbは少なく、GaNSb混晶が適切に形成できていないことを示す結果が得られた。ゆえに、現時点では、価電子帯制御を行うことは極めて難しいと判断した。一方で、n型が低温(750℃)で形成できること、上述したトンネル接合も低温(720℃)で形成できることから、黄色活性層を有する発光素子の低温p側構造として新たに提案し、初期的検討を行った。その結果、駆動電圧が高いものの、電流注入による均一な発光を実現した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)トンネル接合では、深紫外LED用GaNトンネル接合の実現が遅れている一方で、紫外面発光レーザ用のGaInNトンネル接合は、世界で最も低い駆動電圧を示し、かつ再現性よくリーク電流のない埋め込みトンネル接合が実現した。 (2)再現性が十分でないものの、高Al組成AlGaN/AlNヘテロ構造において理論的に予測される高濃度正孔蓄積が実証された。 (3)様々な物性評価によりp型GaNSbの実現は難しいと判断された一方、上記トンネル接合と組み合わせることで、低温成長p側構造の可能性が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の様に、各手法の発展性や見直しを考慮して検討を進め、最終年度として成果をまとめる。 (1)深紫外LED上GaNトンネル接合の結晶成長条件を最適化し、急峻な界面を有するトンネル接合構造を実現、その後、ドーピング濃度などの最適化を行い、低電圧駆動を目指す。一方、昨年度に得られた低抵抗トンネル接合を埋め込んだ電流狭窄構造を実現し、紫外面発光レーザに組み込むことによって、紫外面発光レーザの室温連続動作、さらには低しきい値・高出力動作を目指す。 (2)高Al組成AlGaNへの正孔蓄積の再現性を低下させている要因を検討・解決するとともに、正孔蓄積させた組成傾斜AlGaN活性層やコンタクト層として利用することで深紫外LEDの性能の大幅改善を目指す。そのためには、昨年得られた高品質AlGaNテンプレート上への高品質AlGaN層の成長最適化も必要に応じて行う。 (3)実験によって判明したGaNSbの特性により、今年度はp型伝導実現の計画を延期する(得られた特性などの結果は整理して学会発表を進める)。一方で、このn型GaNSb層をトンネル接合と組み合わせた新しい低温成長p側構造の実現を最優先し、デバイス応用可能なレベルまでこの一年で引き上げる計画とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(3)価電子帯制御において計画遂行が困難な結果となったため、方針を転換して検討を進めたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
方針転換した手法において、低温で形成可能なp側構造による電流注入が得られた。ゆえに、この手法を推進するために使用する予定である。
|