研究課題/領域番号 |
26286047
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大島 武 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (50354949)
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研究分担者 |
藤ノ木 享英 (梅田享英) 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 准教授 (10361354)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 格子欠陥 / 半導体物性 / 光物性 / 放射線 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射線(電子線やイオン)照射や熱処理条件を工夫し、安定な発光を有する単一発光中心を高効率に生成する技術の確立、ダイオードやトランジスタに埋め込んだ単一発光中心の発光やスピン状態を外部からの電圧印加といった手法を用いて電気的に制御すること等を目指し、2MeV電子線照射及び600~1650Cといった高温熱処理を施した高純度半絶縁性(HPSI)、n型及びp型4H-SiC基板やSiCデバイス内部に生成される単一発光中心の探索や物性測定を行った。その結果、表面付近に構造は未同定であるが非常に高輝度の単一発光中心が存在すること、この単一発光中心はSiCの表面状態に敏感であり、550C以上での酸素処理(酸化膜形成)により発光が安定することが判明した。デバイス内の単一発光中心の研究では、nチャネル金属-酸化膜-半導体(MOS)型電界効果トランジスタ(MOSFET)のp-チャネル領域とMOSFET外周(チャネルストッパー)のp注入領域に単一発光中心が存在することを確認した。これらは、4H-SiCのp型ドーピング濃度の違いにかかわらず同程度の密度であり、輝度は非常に強く、ダイヤモンドのNVセンターの輝度(80kcps)の約2倍(180kcps)であった。発光欠陥は常に結晶の最表面に発生しており、上記に示したバルク試料で発見した単一発光中心と同一の起源であることが示唆される。MOSFETにおいて、チャネルストッパー領域の単一発光欠陥の電界制御を試みたところ(チャネルストッパーに隣接したn+ドレイン電極から電界を印加した)、-2.5Vの順方向電圧を閾値として発光がオフになる挙動が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子線照射とその後の熱処理と単一発光中心の生成の関係に関する研究及びデバイス内に存在する単一発光中心の研究を着実に推進している。 特に1650Cといった高温熱処理後にも消滅せずに存在する単一発光中心に関して550C以上の酸素処理で発光が安定性することを見出した成果は、高輝度・安定な単一発光源の生成プロセスの確立にとって重要な知見であるといえる。加えて、デバイス内部に単一発光源を発見し、さらに電界制御の可能性を見出したことは、本研究課題の目標達成に向けた重要な成果であることから、順調に研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、作成条件の最適化に向けた更なる研究として、放射線種や基板種類、後処理を変えた4H-SiC試料に対するCFMやフォトルミネッセンス(LTPL)測定を引き続き行う。加えて、デバイス内に存在する単一発光源の物性制御に関する研究を推進するにあたり、より測定に適したデザインのデバイス設計・製作を進める。これらデバイスを用いて単一発光中心の発光やスピン挙動とデバイス動作(電圧印加や電流中)の関係を調べることで、単一発光源の物性を明らかにするとともに、発光やスピンをデバイス動作で制御する技術を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
単一発光源の観察用の新しい構造を有するデバイスのためのフォトマスク作製を進めたが、CFM測定結果を基に更なる構造の改良をすることが研究を効率的に遂行すると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
デバイス用のフォトマスクの設計・作製費として使用する予定である。
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