研究課題/領域番号 |
26286048
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平山 博之 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60271582)
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研究分担者 |
齋藤 晋 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00262254)
中辻 寛 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80311629)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲルマネン / シリセン / 走査トンネル顕微鏡 |
研究実績の概要 |
Si(111)基板上に形成したAg(111)超薄膜表面にSi原子を供給した場合に出来るSiの2次元ハニカム格子物質”シリセン”の成長過程をSTMにより詳細に観察し、その全貌を解明した。この結果、これまで信じられてきたようにAg表面上にinertにシリセンは成長するのではなく、Si原子はAg原子と入れ替わってAg超薄膜表面上に1原子層低い領域を形成し、この中に捉えられたSi原子が局所的に1ML程度の原子密度になることでシリセンの成長が進むことが明らかになった。 さらにSi(111)√3x√3-Ag基板上にSi原子を供給した際のSi原子層成長過程をSTM,XPS,ARPESを用いて研究し、Ag超薄膜表面に見られたAg原子とSi原子の交換過程は一般的なものであること、このためAg基板を用いた従来の方法では、たとえこの上にmultilayerのシリセンを成長したつもりでも、最上層にはAg原子が浮かび上がってしまうため、intrinsicなシリセンの形成が起こらないことを明らかにした。 以上の結果から、本研究の遂行のためには原子交換を起こさない安定な基板が必要であると考え、理論計算でintrinsicなシリセン形成が報告されているグラフェンを基板にしたシリセン成長の可能性を実験により検討した。しかしこの系では理論計算では考慮されていない成長過程におけるkineticsにより、Siは3次元的に成長してしまうこと、またこれを防いで2次元層状物質を形成するためにはグラフェンよりもIV族原子に対する吸着エネルギーの大きな基板が必要であることがあきらかになった。 これを受けて、2次元層状物質の成長に適した基板であるh-BNをアンモニアボランを原料としたMBE成長により形成できるような装置の作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の実施により、これまでゲルマネンの類似物質であるシリセンの成長に最適であると信じられてきたAg(111)表面は、実はIV族原子吸着に対して不安定であり、intrinsicな性質を保った2次元層状物質が形成されているのではないことが明らかになった。さらに理論計算では良好な基板と考えられていたグラフェンも、成長過程のkineticsのために、成長基盤としては適さないことが明らかになった。 このため、本研究の主目的であるゲルマネンの創生のためには、当初一番初めに使用することを予定していたAg基板に代わる基板を探索することが必要となったため、研究が当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Si(111)√3x√3-B基板上にアンモニアボランをソースとした分子線エピタキシャル製著言うで、h-BN単原子層薄膜を形成させるために最適な成長条件を確立する。さらにこのh-BN単原子層を基板に用いてその表面におけるGe原子の表面拡散バリアを制御しながら、この上にシリゲルマネンの成長を行い、この新物質を創生する。またその原子配置と電子状態をSTM, STS, ARPESを用いて明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の実施により、これまでゲルマネンの類似物質であるシリセンの成長に最適であると信じられてきたAg(111)表面は、実はIV族原子吸着に対して不安定であり、intrinsicな性質を保った2次元層状物質が形成されているのではないことが明らかになった。さらに理論計算では良好な基板と考えられていたグラフェンも、成長過程のkineticsのために、成長基板としては適さないことが明らかになった。 このため、本研究の主目的であるゲルマネンの創生のためには、当初一番初めに使用することを予定していたAg基板に代わる基板を探索することが必要となったため、当該年度の研究費を予定から変更してAgに代わる基板として有望なh-BN単原子層膜形成のための装置試作に充てる変更を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度仕様額は、基板としてのh-BN単原子層膜形成後に、再び当初の計画にある基板上へのゲルマネンを成長するために必要な成長・評価装置の試作に充当する計画である。
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