研究課題/領域番号 |
26286049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 順 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (40335071)
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研究分担者 |
佐々木 宏和 古河電気工業株式会社研究開発本部横浜研究所, その他部局等, 主席 (70649821)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 回折顕微法 / 位相イメージング / 電子線 |
研究実績の概要 |
初年度は再構成位相の定量性を阻害する以下の2要素への対策に取り組んだ。 一つ目は、小角散乱図形記録中のマイクロラジアンオーダーのドリフトである。これは回折図形を形成するレンズ磁場の揺らぎに起因しており、CCDカメラによる1秒以下程度の短時間露光を繰り返した後に相関を取って足し合わせることにより、影響を回避する手法確立に成功した。またこの過程で、CCDカメラの暗電流値が変化しないピーク強度閾値の割り出しにも成功し、高いSN比を持ちドリフトの影響のない小角散乱図形取得の手順を確立した。 二つ目は、回折図形に含まれるバックグラウンド強度である。エネルギーフィルターで非弾性散乱電子を除去した場合でも、小角散乱領域にバックグラウンド強度が存在することが、本課題研究開始時点までに判明していた。この強度は試料波動場と回折波動場の間のフーリエ変換関係を乱すため、再構成結果にアーティファクトを生じる。このバックグラウンドの成因はこれまで未解明であったが、レンズ収差とビーム空間干渉性、さらにCCDカメラの滲みに起因することが判明した。これらへの対策として、円形開孔絞りからのAiryディスクの強度プロファイルをシミュレーションとフィッティングすることにより、各種パラメータを決定する方法の確立に成功した。このフィッティング結果に基づき、まずは干渉性とCCDカメラ滲みの影響をデコンボリューション演算で取り除き、その後レンズ収差による位相変調を差し引くことで、試料からの位相変調だけを精度良く再現する手法の開発に成功した。 また位相像の高分解能再構成については、27年度に計画していた取り組みの一部を前倒しして開始した。具体的には、電子線波動場伝播を利用したナノ構造の立体観察について、位相像と対をなす振幅像を用いた方法について検討し、収差補正TEM像のフォーカス変動から精度良く計測可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ定量性の伸張に不可欠な複数の対策を確立することに成功し、データ処理作業の簡素化と自動化に向けた作業手順の確立および処理プログラムの作成にも大幅な進展があった。また、高分解能位相像再構成については、次年度に取り組む計画の一部を前倒しして開始し、電子線波動場の伝播について理解を深めることができた。これはナノ構造の立体観察計画への重要な基礎となる成果である。一方で、タイコグラフィーによる視野範囲の拡張と、シミュレーションによるノイズの影響の評価に関しては明確な結論を得ることができておらず、これらの点に関しては次年度に持ち越しとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に達成できなかった計画の遂行に加え、当初の研究計画通り、低加速電圧での高分解能再構成、および半導体テスト試料を用いた電子線ホログラフィーとの位相検出精度・感度についての比較を進める。また、誘電体・磁性体微粒子周囲の電場磁場分布の正確な観測と、半導体試料エッジから奥深く離れた部分のドーパント分布を観測を行い、電子線ホログラフィーに対する優越点を明示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する電子顕微鏡を当初計画から変更したため、電界放出型電子顕微鏡フィラメントの交換時期が先送りとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の電界放出型電子顕微鏡フィラメントの交換費用に充てる予定である。
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