研究課題/領域番号 |
26286050
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
一井 崇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30447908)
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研究分担者 |
杉村 博之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10293656)
邑瀬 邦明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30283633)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / イオン液体 / 電気化学 / 固液界面 |
研究実績の概要 |
これまで、電解研磨により先鋭化したタングステン探針を取り付けた音叉型水晶振動子をAFMの液中フォースセンサとして用いてきたが、タングステンの比重の高さにより、共振周波数が大きく低下し、これにより、高速化・高感度化が妨げられていた。そこで、比重が小さく、かつ比較的ヤング率の高い材料としてシリコンに着目し、その先鋭化プロセスを開発した。具体的には、フッ酸水溶液中での電解研磨と水酸化カリウム水溶液中での異方性エッチングからなる二段階エッチングプロセスにより、先端径120 nmまで先鋭化することに成功した。このシリコン探針を取り付けたフォースセンサは、タングステン探針を取り付けたそれよりも30 %以上高い共振周波数を示し、さらに液中原子分解能観察も達成され、本プロセスの有用性が示された。 さらに、変位検出の高感度化のため、従来の水晶の圧電性を用いた電気的変位検出ではなく、光干渉変位検出系の開発にも取り組んだ。光学系・機械系・電気系の構築はほぼ完成し、基礎的な知見を収集した。これに加え、電気的変位検出とは異なり、光干渉変位検出により高次共振モードも検出可能であることを実験的に検証した。 また、電気化学AFMのより実用的な系への展開を目指し、リチウムイオン電池電極材料である酸化物結晶のイオン液体中での構造分析に取り組んだ。原子分解能観察に成功し、この材料表面がイオン液体中においても安定であること、またこのような電池材料に対しても本AFMが適用可能であることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコン探針先鋭化プロセスの確立とそれによる共振周波数の上昇・原子分解能観察の達成により、AFM高感度化の最初のステップはクリアされた。また、光干渉変位検出系の開発についても、光学系・機械系・電気系の構築はほぼ済んでおり、基礎的知見は十分に収集できた。この知見をもとに、光学系ならびに電子回路の改善により、さらなる力検出感度の向上を目指し、真空電気化学AFMへの組み込みを進める。また、どのような材料に対して原子分解能観察が可能であるのかを実験的に検証していくのは重要な項目であるが、実用材料であるリチウムイオン電池用電極材料に対してこれが可能であることが示され、これは電池動作環境下でのin situ測定への展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前年度に構築した光干渉変位検出系の改善により、さらなる力検出感度の向上を目指すとともに、これの真空電気化学AFMへの組み込みをすすめ、3次元フォースマッピングの実現を目指す。さらに、フォースセンサ振動エネルギー散逸検出・高次共振モードの利用などを組み合わせることで、表面・界面構造分析技術だけではなく、物性評価技術へと展開を図る。
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