研究課題
ナノ磁性体に閉じ込められる電子のエネルギー状態やスピン状態は、ナノ磁性体を構成する原子数に大きく依存する。そこで、原子操作技術を用いて構成原子数の明らかなナノ構造体を絶縁体表面に構築した。ナノ磁性体の構成原子としては、コバルト(Co)を、絶縁体表面として原子的に平坦な塩化ナトリウム(NaCl)表面を取り上げた。なお、塩化ナトリウム表面に帯電電荷が多少存在し、原子操作時の探針・試料間に静電気力が重畳され力の設定が困難だったため、帯電電荷を逃がすためのアニール処理を行った。原子操作においては、探針・試料間の熱ドリフトが、探針の位置制御の誤差を生じさせ、原子操作の再現性を低下させたり、測定の平均化処理精度を低下させたりすることがあった。そこで、アトムトラッキング技術を用いて熱ドリフト量を算出し、それを補償することにより位置制御の精度を向上させた。ナノ磁性体の磁性を解明するため、個々の原子位置での交換エネルギーの深さと原子間の障壁の大きさを議論する必要がある。そこで、磁性体探針と磁性体試料の間の距離を変えながら、カンチレバーの周波数シフトの変調成分を3次元的に測定し、その交換エネルギー分布を導出できるようにした。なお、交換エネルギーの測定において、カンチレバーの周波数シフトに含まれるマイクロ波の変調成分をロックインアンプで検出して分離測定したが、その精度が十分でない場合があった。そこで、新たにヘテロダイン(周波数変換)技術に基づく交換エネルギーの分離測定法を考案した。3次元フォース分光法を用いて、ナノ磁性体における磁気交換相互作用を検討した。ナノ磁性体を構成する原子数や原子種、次元がスピン状態にどのように影響するかを実験的に検討した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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