1.ナノ領域の温度測定に関する研究 光吸収によるナノ領域の温度変化について得られた結果を熱伝導シミュレーションの結果を比較しながら温度分布に関する考察を行った。「温度計」として用いたものは、有機色素ローダミン110を用いたアンチストークス蛍光であり、その強度変化とエバネッセント光の浸みだし長の関係から、ナノ領域の温度分布を求めることに成功した。 前年度までに作製した3次元熱伝導解析シミュレーターを用いて、ガラス基板に周期的に配置されたセミシェル構造とナノロッドの共鳴吸収による温度上昇の計算を行った。周期構造のナノロッドは、周期が短くなると基板の温度変化が大きく上昇するのに対し、セミシェル構造はガラス基板との接点が小さいため近接させて配置した場合でも温度上昇の値は孤立時とほぼ同じであった。このことはセミシェル構造が熱的に孤立しており周囲のセミシェル構造の影響を受けにくいことを意味している。また有限要素法で熱伝導を解析するソフトウエア(COMSOL Multiphysics)を用いて作製した3次元熱伝導解析シミュレーターの確からしさの検証を行い、ほぼ同等の結果が得られていることを確認した。 2.光熱メタマテリアルの作製 自然界のナノ構造を金や銀でコーティングしたメタマテリアルについて研究を行った。セミやトンボの翅のナノ構造に着目してメタマテリアルの作製を行った。その結果、ミンミンゼミやニイニイゼミで良好な特性を示す黒体(光学吸収表面)を得ることができた。さらに、自然界のナノ構造だけでなく、自己組織化構造を使った黒体の作製にも成功した。トリミリスチンなどの油脂を高温から冷ますことにより、その表面の非平衡状態に起因するナノ構造が自己組織化的に表れる。この上に金を蒸着することにより黒体光熱メタマテリアルを作製することができた。
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