研究課題
平成27年度までの研究では、全光走査型ナノ光スイッチシステムのための基盤技術の創出を目的とし、局在表面プラズモン(LSP)共鳴励起した金ナノ粒子の放射する第二高調波(SHG)を利用したプラズモン分極の超高速時間応答性について検討した。これまでロッド形状の金ナノ粒子をモデルとして選択し、研究を進めたが、この構造は反転中心を持つため、電気双極子型二次非線形光学禁制であった。そのため、励起光を有限の入射角度で照射し、多重極子効果を利用して二次非線形性を誘起しなければならず、垂直入射条件での光操作を基本とする顕微光学系での操作に不向きであるばかりか、得られるSHG信号も弱かった。平成28年度は反転中心を持たない三角柱形状金ナノ粒子について検討した。研究の結果、垂直入射条件においてもSHG発生に成功し、電気双極子型二次非線形光学遷移許容なナノ構造体を完成した。更に時間応答性を周波数分解時間ゲート法により試験した。パルス幅20fsの光パルスに対し、時間幅30fsの自己相関波形が得られ、フェムト秒オーダーの時間応答性を示すことを実証した。続いて最適な非線形性増大効果を実現するための非線形光学(NLO)ポリマーの選択方法を検討した。異なる遷移周波数を持つ非線形光学ポリマーを用意し、その薄膜を積層した金ナノ粒子のSHG発生を試験した。ポリマーの遷移周波数がLSP共鳴周波数に接近すると、LSP発生に伴う発熱によりポリマー材料が熱損傷するという問題が判明した。これに対して、LSP共鳴周波数に対して二光子共鳴するポリマー材料は、発熱の問題がなく、大きな非線形性を示すことを確認した。最終的に最適化条件を持つNLOポリマーを積層した金ナノ粒子は、純粋な金ナノ粒子系と比較して、25倍のSHG発生を記録した。最後にナノ光素子として実用化し、光集積回路へ組み込む上での課題について検討し、研究の総括とした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry
巻: 340 ページ: 35-45
http://doi.org/10.1016/j.jphotochem.2017.03.007