研究課題/領域番号 |
26286064
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 政志 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60314382)
|
研究分担者 |
森 勇介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90252618)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非線形光学結晶 / 紫外レーザー / フォトリフラクティブ損傷 / 結晶成長 / 波長変換 |
研究実績の概要 |
1.循環流(上下流)が強化できる新型攪拌翼を用いて、TSSG式の単結晶育成装置により無添加CLBO結晶のバルク結晶成長を試みた。流動解析から予測されたように、従来の旋回流(水平方向)主体の撹拌効果に加え循環流が強化されることが確認され、回転速度等の条件探索を行った。水平・垂直方向の成長速度がバランスした状態で、理想的なバルク形状結晶の育成を実現した。次年度はこの条件下で、アルミニウム等を添加したCLBOの単結晶作製を試みる。
2.波長266nmパルス紫外光に対するフォトリフラクティブ損傷耐性を評価する光学系を構築し、様々な品質の無添加結晶とアルミニウム添加CLBOの寿命評価を行った。さらに、緑色レーザー光(30mW)を用いて素子内部の光散乱(光路状散乱)を対水晶比により数値化して寿命と散乱の相関関係を明らかにした。その結果、アルミニウム添加CLBOは光散乱が同程度の無添加CLBOに比べても素子寿命が長く、添加したアルミニウムの寄与が確実なことが明らかになった[レーザー研究]。
3.CLBO結晶は従来波長300nm以下の深紫外波長変換での用途が主なものであった。現在普及している355nm光源の発生特性はこれまで報告がなかったが、大きなウォークオフ効果を補償する非同軸位相整合(ノンコリニア位相整合)を検討した。オプティカルコンタクトによってWedged-cut素子にプリズムを接合させた新しい素子を開発し、非同軸位相整合にてCLBOで初めて高効率355nm光波長変換を実証した[応用物理学会春季学術講演会]。入射緑色光(波長532nm)に対する内部変換効率は47.6%、出力として1.86Wを発生させた。これにより、CLBOは深紫外領域だけでなく、近紫外域の355nm光発生にも利用できることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型攪拌翼を用いたバルク単結晶(無添加CLBO)の成長条件を確立させるのに時間を要したため、平成26年度は無添加のCLBO結晶に対しての成長基礎データ、及び新型攪拌翼の効果の検証にとどまった。次年度以降、添加物の検討を本格化させたい。 CLBO結晶の内部散乱、経時劣化耐性の評価は比較的順調に進んだ。これと並行した355nm紫外光での波長変換において、新しいプリズム接合素子によって非同軸位相整合が成立し、高効率な波長変換に成功した。変換効率は入力532nm光のエネルギーの50%近い値を得、既存のLBOより高出力が出せること、温度変動に対して極めて安定なことなどを世界で初めて実験により確認できた。Al添加結晶のフォトリフラクティブ損傷耐性向上は確認できたが、メカニズム解明につながる直接的な結果は出せていないため、達成度は上記の選択となった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.新しい攪拌翼を用いた単結晶育成装置を用いて、添加物を加えたCLBOでかつ内部散乱の少ない結晶の成長を試みる。昨年度まで、新型装置で無添加CLBOの育成を重ねており、次年度はアルミニウムに加えて様々な添加物の検討が行える見込みである。得られた結晶内部の添加物の濃度分布、成長速度依存性や、フォトリフラクティブ損傷耐性の均質性などを明らかにする。
2.昨年度構築したフォトリフラクティブ損傷耐性を評価する光学系を用いて、ピエゾ効果を使った振動ステージにCLBOを搭載し、連続移動させた時の損傷耐性の変化を調査する。これにより、フォトリフラクティブ損傷の形成・緩和過程を明らかにすることができ、メカニズム解明への糸口となるものと期待している。
3.CLBO結晶の暗伝導率測定を、添加物結晶や光散乱源の異なる無添加結晶に対して実施する。フォトリフラクティブ損傷が生じる結晶として長年研究がなされているLiNbO3と同様の、光励起キャリアによる空間電場形成と伝導率向上による解消効果のモデルに適用できるかを検証し、損傷メカニズムの解明につなげる。また、昨年度発生させた長波長の355nm光におけるフォトリフラクティブ損傷効果も検証し、光励起に必要なフォトンエネルギーすなわち欠陥準位を明らかにして、キャリアや欠陥の特定を試みる。
|