研究課題/領域番号 |
26286069
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30312599)
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研究分担者 |
加藤 俊顕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20502082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気液界面プラズマ / ナノグラフェン / 量子ドット / 光電変換デバイス / 多重励起子生成 |
研究実績の概要 |
初年度は,ナノカーボン量子ドット光電変換デバイスの最重要課題であるナノグラフェンの構造制御形成とナノグラフェン量子ドットから励起子を引き出すn型半導体カーボンナノチューブの合成を中心に行った. 1.ヘリコン波生成メタンプラズマを用いて,カーボンナノチューブ上にナノグラフェンの形成を行った.カーボンナノチューブを配置した基板上に,高密度のメタンプラズマを照射することで,カーボンナノチューブ表面にナノグラフェンが形成されることが明らかになった.また,カーボンナノチューブへのプラズマ照射角度や照射時間を変化させることによって,カーボンナノチューブの軸に対するナノグラフェンの形成角度や形成密度を変化できることが明らかになった. 2.半導体カーボンナノチューブを選択的に合成するために,パルスプラズマ化学気相堆積(CVD)法を用いて,プラズマを生成する高周波入射のオンとオフの時間を制御する実験を行った.その結果,プラズマオフ時間を長くすることによって,カーボンナノチューブのカイラリティ分布を狭くすることができ,半導体特性を示すカーボンナノチューブを選択的に合成することに成功した.さらに,n型特性の半導体カーボンナノチューブを合成するため,プラズマCVD中に窒素ガスを導入して,窒素原子イオンのドーピングを試みたところ,電気特性の異なるカーボンナノチューブが合成されることが明らかになった.これは,カーボンナノチューブ上の炭素と窒素が入れ替わる「グラファイト置換型ドーピング」が起こり,n型半導体に変化したためと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブ上へのナノグラフェン合成に関しては,ヘリコン波プラズマをカーボンナノチューブ塗布基板に照射することにより,カーボンナノチューブ上に比較的等間隔で形成できることを実証しており,計画通りに達成できている.また,ナノグラフェンで生成した励起子を引き出すn型半導体カーボンナノチューブの形成については,パルスプラズマCVD法を活用することによって,極めて狭いカイラリティ分布のカーボンナノチューブを形成でき,半導体カーボンナノチューブを選択的に合成することに成功しており,おおむね順調に研究を遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,カーボンナノチューブ窒素ドーピングによるn型半導体化とナノグラフェン形成の最適化を行い,そこで形成した構造制御ナノグラフェンを用いて光電変換デバイスを作製する.ナノグラフェンによる多重励起子の生成を明らかにするとともに,カーボンナノチューブ電極を通して,外部に電流を引き出すことができていることを実証する. 1.ヘリコン波プラズマの電子密度,電子温度,イオン照射エネルギー,プラズマ照射時間,等を精密に変化させ,ナノグラフェンのサイズ,アスペクト比,配向等の構造が何によって決定されているかを明らかにする.ナノグラフェンの構造は,ラマン分光分析と透過型電子顕微鏡の直接観測により行う.このとき,ナノグラフェン形成が,基板となるカーボンナノチューブの直径にも依存している可能性があるため,カーボンナノチューブの直径も変化させて実験を行う. 2.カーボンナノチューブ上に形成した構造制御ナノグラフェンを負極として用いて,色素増感型光電変換デバイスを作製する.波長可変光照射システムを用いて,長波長の赤外領域から短波長の紫外領域に向けて,波長を掃引しながら光を照射し,ナノグラフェン量子ドットのバンドギャップの2倍以上のエネルギーの波長になった時に光電変換効率が急激に増加する多重励起子生成が起こるかどうかに注目する. 3.ナノグラフェンの構造によってバンドギャップが異なり,多重励起子が生成される照射光の波長も変化すると考えられるため,構造を制御して形成したナノグラフェンを用いて,紫外,可視,赤外のフルスペクトル領域で多重励起子が生じることを実証する.
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