研究課題/領域番号 |
26286070
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤塚 洋 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (50231808)
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研究分担者 |
松浦 治明 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (70262326)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ計測 / プラズマ分光 / 原子分子過程 / パルス放電プラズマ |
研究実績の概要 |
実験研究として、電源および回路部品等消耗品を購入し、パルスプラズマ発生装置を作成した。ついで密閉容器内に微小ギャップを有する電極を設け、パルス電圧を与え絶縁破壊によりストリーマ状のマイクロ放電プラズマを生成した。ピーク電圧数10kV, パルス幅として数100 nsec 程度のパルス放電プラズマ生成装置を立ち上げ、その電気回路としての電流電圧特性を測定した。放電気体として純アルゴンまたは純ヘリウムを用い、ガス流を利用する事等により、各種の圧力でパルス放電プラズマの安定生成を行った。一方、アルゴン・ヘリウムプラズマそれぞれについて、パルス放電プラズマ装置を用いた時間分解発光分光計測を実施した。各時間毎の発光強度変化を測定し、励起状態数密度を求め、数密度および励起温度や、その時間変化および変化の時定数等を考察した。電子温度・密度の変化を反映しうる励起状態の組を特定し、時間変化を詳細に追跡した。 理論研究としては、各励起準位の時定数に関する特長を見極める事から着手した。大気圧放電にも適用可能な、ヘリウムプラズマ・アルゴンプラズマの衝突輻射モデルによる励起状態数密度計算プログラムにつき、過渡変化に対応する様にプログラムを改変する作業を実施した。EEDF、電子密度、および放電ガス種の基底状態数密度に対して、各励起状態の時定数を整理し、電子温度・密度の変化に速やかに追随する準位とその時定数、追随の遅い準位とその時定数を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的に、大気圧ストリーマ放電などのパルス放電プラズマを対象として各種励起状態の時間分解発光分光計測を実施し、各準位の発光強度の時間依存性を求め、放電プラズマ生成条件に対応した発光分光特性の体系的な研究を行うことが実験分野での最終的な目的であるが、初年度にはそのうち、純ヘリウムおよび純アルゴンで圧力数Torr の減圧~大気圧パルス放電プラズマを発生することが可能となったし、線スペクトル・バンドスペクトル強度の時間依存性を測定し、EEDF や電子密度の過渡的な変化とともに、個々の準位の数密度の変化を、計測することがある程度実施できた。具体的計測として、大気圧ストリーマ放電プラズマを対象として各種励起状態の時間分解発光分光計測を実施し、各準位の発光強度の時間依存性を求め、放電プラズマ生成条件に対応した発光分光特性を調べることもできた。線スペクトル強度の時間依存性を測定し、EEDF や電子密度の過渡的な変化とともに、個々の準位の数密度がどのように変化するか、相関関係を明らかにすることもある程度達成できた。 一方、理論的な取り組みとして、励起状態生成消滅の時間発展を記述するレート方程式を常微分方程式系ととらえ、さらにEEDFと連立させ、時間依存の解を考察することが目的であるが、これについてもArおよびHeの衝突輻射モデルを応用し、励起状態数密度の時間依存解について系統的な研究が進展している。即ち,各パルス放電の条件に応じて、放電開始後の励起状態数密度の時間発展を検討することができた。電子温度・密度の変化に速やかに追随する準位とその時定数、追随の遅い準位とその時定数を整理することも達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
実験的には、2年度目は積極的に装置パラメータを変化させて、HeやArに加えてN2やO2を含んだプラズマも対象とし、パルス放電プラズマの特性を変化させ、それによって発光特性の変化する様子を追跡する事を試みる。すなわち、加えるパルスの電圧、パルス幅、パルス立ち上がり速度、放電気圧、などを変化させつつ、He, Ar, N2, O2のそれぞれのプラズマの各励起状態の数密度、さらに分子気体の場合は振動温度や回転温度について、時間変化を詳細に実験的に追跡することとする。 一方、理論研究としても、HeやArに加えてN2やO2を含んだプラズマも対象とし、26年度と同様、EEDFの時間的変化を時間依存ボルツマン方程式で追跡し、励起種の生成消滅のレート方程式と連立させた解法を研究する。もちろん、これら分子種のカイネティックスには主要な電子状態の振動励起状態なども含める。26年度との大きな違いは、衝突項に、窒素分子振動励起状態との衝突による超弾性衝突も含める点にある。窒素プラズマの各電子励起状態の振動励起状態も時間依存の関数として計算し、超弾性衝突と振動励起緩和の関係を十分モデルに取り入れる。ボルツマン方程式の過渡変化を取り入れるために、定常状態で確立したストラテジーが現実のパルス放電プラズマに対しても適用できる事を実験的に確認する。 また、実験結果を理論研究にフィードバックして反応理論モデリングの改良を加える。窒素分子・酸素分子の励起準位や解離して生じるラジカルなどについても、主要な気相化学反応も含めた励起種生成消滅の時間依存方程式を立式し、それらも含めたパルス放電プラズマの発光分光計測に堪えるレート方程式理論モデルの作成・改善を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品としてのマルチチャネル分光計測システムが当初予定より安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに開催が決まった国際学会~3rd ISNPEDADM 2015(New electrical technologies for environment)等~への旅費に充てる。
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