理論研究面では、28年度は窒素・酸素を含むアルゴンあるいはヘリウムの放電気体を対象として、それらの励起準位・ラジカルをも含めて、励起種生成消滅の時間依存方程式を立式し、反応性気体を含むパルス放電プラズマの発光分光計測に堪える理論モデルへの改善を実施したが、残念ながら断面積データがプラズマ理工学の学術界においても不十分であることが判明した。そこで、窒素プラズマに集中すべく方針を切り替え、窒素単独の電離進行プラズマに関して衝突輻射モデル研究を一層充実させ、発光分光特性から電子平均エネルギーや電子密度を求める手法の理論的確立を行なった。 実験研究としては、26-27年度は、放電条件を入力条件として分光特性を測定し、そのメカニズムを考察し解明する事が基本であった。28年度には本研究の最終目標として、これを逆転させ、分光計測結果から電子温度(あるいはEEDF)・電子密度の変化を導出することを目指した。すなわち発光特性からプラズマパラメータの特定の可能性を探るという方針に切り替えた。これによって求められた電子密度、あるいは放電条件変化による電子温度(あるいはEEDF)・電子密度の値の変化が、理論的にも妥当なものであるか否か、自作の理論との合致はもちろん、電気回路的にも矛盾のないものであるかを検討した。残念ながら実験機器に不具合が多発したため、実験的な精査は困難となったが、理論的にアルゴンの電離進行プラズマについて、電子温度・密度変化に敏感に応答する励起準位の組をそれぞれ見いだすことができた。さらに、そのような電子温度・密度への特異的な感度がなぜ生じるのかを原子素過程の面から考察した。以上を総合して、論文の作成、国際会議および国内学会での成果発表を行い、以降の課題の抽出を行い、総合的な実験・理論の総括を行った。
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