研究課題/領域番号 |
26286073
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
琵琶 哲志 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50314034)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱音響自励振動 / 同期現象 |
研究実績の概要 |
気柱の一部分を加熱して平衡状態から遠ざけると,強い気柱振動「熱音響自励振動」が生じる.この現象の抑制は燃焼工学分野では急務の課題である.本研究では,2つの熱音響自励振動子の相互作用を利用した自励振動抑制を実験的に試みた. 実験に使用した熱音響自励振動子は,長さ720 mm,直径24 mmのステンレススチールパイプ製の共鳴管とその内部の一対の熱交換器で挟まれた多孔質体(長さ20 mmの円筒形状で,多数の四角形の貫通穴を備える)からなる.熱交換器を用いて230 ℃の軸方向の温度差を多孔質体に与えると,管内に充填された作動気体である空気が基本モードで振動を開始することを事前に確認した.同様の振動子をもう1つ作成し,その結合を試みた.なお2つめの振動子の自励振動周波数は,共鳴管全長を可動式プラグにより変更することで調整可能とした. まず始めに散逸的結合を実現するために,共鳴管を互いの両端でニードルバルブを介して結合した.その結果,適当なバルブ開度のときに振動が停止することが分かったが,振動子の周波数差が比較的小さいと同相同期が生じて振動停止しなかった.次に時間遅れ結合を導入するために,バルブに加えて中空のシリコンチューブで2つの振動子を結合した.およそ半波長の長さのチューブを用いたところ,周波数差が小さくても適当なバルブ開度で振動が停止することが分かった.振動が停止する条件を周波数差とバルブ開度をパラメータにして探索したところ,単にバルブのみで結合するよりも,バルブとチューブで結合する方がより広いパラメータ領域で振動停止できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究の目的に掲げた2つの課題のうち第1の課題は「結合による振動抑制」である.散逸結合と時間遅れ結合の2つを組み合わせる方法の有効性を実験的に示した.合わせて,van der Pol振動子を対象にした計算機実験を行った結果,(1)散逸結合のみ,(2)時間遅れ結合のみ,の2種類の結合方法に比較しても,本実験で提案した(3)散逸結合および時間遅れ結合,の方法がより広いパラーメータ領域(周波数差と散逸結合の強さ)で振動停止できることを明らかにしている.これは当初予測していなかった成果であり,工学的,学術的価値が高いと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
熱音響自励振動系では,中空のチューブという簡単な道具立てで「時間遅れ結合」が,またバルブにより「散逸結合」が実現できることが分かった.流体の振動系では多様な非線形散逸構造が知られているが,このように単純に結合が可能な系は多くはない.熱音響系を流体系の典型例として基本的な現象を調べたいと考えている.とくに今後は熱音響系でカオス振動を実現し,多様な結合方法によるカオスーカオス同期を試みる計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴って発生した未使用額である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額と合わせ平成27年度の研究遂行に使用する予定である.
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