研究課題/領域番号 |
26286074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 和則 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379097)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高効率太陽光発電材料 / 計算物理 / 太陽電池 / 半導体物性 / 物性理論 |
研究実績の概要 |
古典的なShockley-Queisser(SQ)理論を光吸収係数の第一原理計算と組み合わせ、現実的な物質パラメーターを用いたエネルギー変換効率のシミュレーターを開発している。これまでに電子状態および光吸収係数の計算に用いてきたハイブリッド法に加えて、さらに高精度な計算法であるGW法を用いた計算を系統的に行い、シミュレーターとしての有用性を確認した。具体的には、50種類程度の半導体や酸化物の系にGW法を適用し、バンドギャップエネルギー、バンド構造、有効質量など太陽電池特性を左右する物性パラメーターをどの程度再現できるかを調べた。その結果、GW法は0.2~0.3eV程度バンドギャップエネルギーを系統的に過大評価することが明らかとなった。この課題評価を補正する実用的な方法として、GW法にLDAを20%混合する、新しいハイブリッド法を太陽電池材料のシミュレーションに使用することを提案した(D. Deguchi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 55 (2016) 051201)。 開発した新しいハイブリッド法を、近年低コスト太陽電池材料として注目されている有機-無機ペロブスカイトやカルコパイライト系の材料に適用し、タンデム型太陽電池として高効率が期待できる組み合わせを提案した。また、開発中の第一原理太陽電池シミュレーターを、酸化物太陽電池材料として合成がすすみつつある擬ウルツ鉱型CuGaO2について適用し、その太陽電池材料としての可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
半導体の太陽電池としての特性は、バンドギャップエネルギーにより大きく左右される。そのため、材料の太陽電池としての性能を第一原理電子状態計算に基づき評価するためには、バンドギャップエネルギーを正確に再現することが必須となる。バンドギャップエネルギーは従来の局所密度近似(LDA)や一般化勾配近似(GGA)では十分よく再現できないことが知られており、それらの方法をのりこえたGW法の開発が活発に行われてきている。今年度の研究では、ecaljパッケージ(https://github.com/tkotani/ecalj)に実装されているQSGW法による電子状態計算を系統的に進めることができ、その結果、第一原理太陽電池シミュレーターとして使用するには、従来のLDAとQSGWを2:8の比率で混合したハイブリッド法が適切であるという知見を得た。本ハイブリッド法は経験的な方法となるが、計算コストの観点からは有用性が認められ、太陽電池シミュレーターとして想定以上に実用的な提案が出来たことから、「当初の計画以上に進展している」とした。また、得られた新しいハイブリッド法を実際に有機/無機ペロブスカイト材料や様々なカルコパイライト材料に適用し、タンデム型太陽電池として最適と考えられる組み合わせを提案できたことも、当初予定より以上に進展した結果である。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は最終年度であり、これまでに得られた知見を総合し第一原理太陽電池材料シミュレーターとして統合する。H27年度はGW計算の実用性を確認するという点では想定以上の進展が見られたが、半導体中のキャリアの再結合寿命(直接過程、オージェ過程、Shockley-Read-Hall過程)の第一原理計算については予備的な計算の途中である。H28年度の前半は、再結合寿命の計算について再検討しGW法に基づく第一原理的な取り扱いがどの程度現実かを再検討し、場合に依ってはモデル計算を併用する半経験的な手法を検討する。 開発したシミュレーターを環境調和性が高く安価に作成可能な半導体系(例えば、ZnO-ZnS, ZnO-ZnTe, ZnO-GaN, CuFeS2-CuGaS2, CuFeS2-CuAlS2など)の混晶系に適用する。とくに、これらの混晶系でおこる相分離現象に注目し(参考:T. Dietl, K. Sato et al., Rev. Mod. Phys. 87 (2015) 1311)、ナノスケールでおこる自己組織化を利用した高効率太陽電池材料のデザインを実行する。特に相分離により形成された界面の電子状態に注目し、電子-正孔の再結合への影響を調査する。相分離によりえられたナノ構造の特徴を反映したモデル(ナノワイヤーや超格子)を設定し、電子状態計算を行いシミュレーターによりどの程度の効率上昇が得られるかについて検討する。実験グループと議論の上、有望な系については実証実験をおこなう。また逆に既に実験が行われている系について相分離と効率の関係をシミュレーションの結果とつきあわせて整理し、相分離現象を利用した太陽電池材料の高効率化が現実的な方法であるかについての見解としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ処理補助のために学生アルバイトの雇用を想定していたが、補助が不要となったこと、および、国際学会発表を次年度に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度に研究成果の発表として、アメリカ材料学会(MRS Fall meeting, 27 Nov. - 2 Dec. 2016, Boston)と、アメリカ物理学会(APS March meeting, 13-17 Mar. 2017, New Orleans)への旅費に加算して使用予定。
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