研究課題/領域番号 |
26286079
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
安藤 正海 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 教授 (30013501)
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研究分担者 |
鈴木 芳文 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10206550)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線光学系 / 病理学 / X線暗視野法 / 人体軟組織 / X線回折 / X線動力学理論 / シリコン単結晶 / 機械研削 |
研究実績の概要 |
現在人体を含む軟組織の描画に優れていることが徐々に明らかになってきたX線暗視野法(XDFI)と呼ばれる屈折型画像を開発中である。乳ガン、血管、各種関節軟骨などの描画に威力を発揮して来た。放射光源、前置X線2結晶モノクロメーターなどの装置技術の観点からいえば視野の大きさは60mm x 60mmである。一方、撮像に使う7.4ミクロンピクセルをもつCCDカメラの視野は 35mm(H) x 24mm(V)である。このためX線カメラの視野以上の大きさの試料を撮影することは難しい。この条件下で見合う大きさの試料を用いれば2次元像、3次元像が撮影ができる状態になっている。一方病院における病理検査は試料の大きさは30mm(H) x 20mm(V)程度である。空間解像度は光学顕微鏡下での観察であるため数ミクロンに達している。ただし試料づくりは厚さ5ミクロンに切り出す作業に要する時間は多大であること、さらに染色過程を経て1枚づつ顕微鏡下で観察する必要があること、さらに切り離された試料の1枚づつは座標の原点と座標軸の情報が失われているので3次元像を作成することが極めて困難である問題がある。多くの人力を要しながら3次元情報が得られない現在の病理検査における最大の問題点を克服できれば病理検査に対する貢献は大きいと考える。そこでXDFI法を用いて病院で行なわれている病理検査に迫る空間解像度の実現に向けて開発中である。現在の空間解像度は17ミクロンと考えられる。この値をさらに高めることは高木トーパン方程式を数値計算することにより見通しが立ち、XDFIの構成要素であるラウエ角度分析板(LAA)厚を薄くすることで実現できると考えて60ミクロン厚のLAAを作成した。今年度は応力集中を避ける方式を導入した結果、2枚のうちの1枚の半分がXDFIの条件を満たすことが判明し、この方向での開発の将来は明るいと判断できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LAA厚さ170ミクロンにしてX線暗視野像が安定して得られている。17ミクロン (58 line pair/mm)の空間解像度にが得られている。なお加工面を平面に保持するための周辺のシリコン材料厚は3mmである。周辺シリコンの直径は一昨年度は150mm、昨年度は100mm、内部の研削面の直径を80mmから60mmに変えた。従来は薄い箇所から厚い箇所へは垂直に切り立つ転移であったが、昨年度はこの角度を90度から60度へ緩やかにしたことでLAAの完全性が大きく前進した。さらにCCDカメラの製作にとりかかることができた。市販品は画角 35mm(水平) X 25mm(垂直)、ピクセルの大きさ7.4ミクロンであるが、この画角を保ったままピクセルの大きさ4ミクロンが達成できる見込みが立った。
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今後の研究の推進方策 |
薄いLAAから厚さ3mmへ移行する角度を今年度はより緩やかに少なくとも30度にさせること、できれば薄い面から厚い面への移行は接触角度をゼロにする円弧の一部になるように設計する。これにより直径60mm、厚さ60ミクロンのLAAが実現できる見通しである。高木トーパン方程式を用いた計算からは厚さは60ミクロンを下限値とし、研削面の大きさは直径60mmとする加工を促進する。現在安定して得られる厚さは170ミクロンである。加工面を平面に保持するための周辺のシリコン材料厚は3mmとしている。なお直径は昨年度は100mmとしたが、今年度は150mmへ戻したい。理由は従来は薄い箇所から厚い箇所へは垂直に切り立つ転移であったが、昨年度はこの角度を90度から60度へ緩やかにしたことで一定の前進があったからである。これを今年度はより緩やかに少なくとも30度にさせること、できれば円弧の一部になるように設計をした上で研削に臨みたい。このため厚さが変化する部分を十分にとるために直径を大きくすることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
市場調査によると視野30mm (H) x 25mm (V)以上の大きさで、空間解像度7.4ミクロンを超えるCCDカメラは存在しない。そのため市販カメラを利用したこれらの数値を上回るCCDカメラの可能性を調査した。この調査にほぼ1年を要した。昨年11月に上記性能を上回るもの自作カメラ製作の可能性が出てきた。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに市販カメラ1台は入手済みである。必要なレンズ2本は発注済みである。市販カメラの価格を下回る価格で入手できる見込みがたったのでさらにもう一式を発注予定である。システム上で2台のカメラを駆動することにより同時にデータが収集できるので時間の節約になること、ビームの変動による影響を受けにくい利点がある。
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