研究課題/領域番号 |
26286083
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 隆之助 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (70350428)
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研究分担者 |
田中 真人 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (30386643)
平 義隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究員 (60635803)
坂上 和之 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80546333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 光源技術 / 分光技術 / 加速器 / 高性能レーザー |
研究実績の概要 |
本年度におけるシステム開発では、Ti:Saレーザーベースのシステム開発と並行した形で、EOサンプリング及びポンププローブ実験にに用いるYbファイバレーザーを構築し、安定な極短パルス生成及び、同期システムによるテラヘルツパルスとの同期に成功した。同期精度としては3ps程度と十分ではないが、テラヘルツパルスとの時間差の計測系としてフェムト秒の分解能を持つシステムを構築できているため、積極的に同期精度を悪化させて、測定したい範囲をランダムに走査し計測できるシステムとして完成させることができ、EOサンプリングおよびポンプローブ実験への準備が完了した。テラヘルツ光源としては、位相整合チェレンコフ放射を実証し、現在計測できている範囲で0.06THz~1.5THzの超広帯域放射を確認した。周波数の上限は検出器で制限されているため、より高周波まで生成されているものと推測している。 また、タンパク質計測に関しては、加速器からのテラヘルツ波とバンドパスフィルターを用いた水溶液試料の分光計測を試験的に実施した。サンプルとしてタンパク質(ヒト血清アルブミン)を用い、独自に設計した溶液サンプルセルを用いることで、テラヘルツ領域におけるタンパク質吸収係数の濃度変化の計測を実施した。その結果、水和状態の変化によるものと考えられるテラヘルツ領域での吸収係数の濃度変化を高精度に観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム開発の進展もあり、タンパク質計測を実施するなど、おおむね順調に進捗している。ただ、テラヘルツ波のピーク出力が高いため、予想以上にテラヘルツ検波器にダメージを受けることがわかり、今後の対策が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は構築したEOサンプリングシステムによるテラヘルツ放射の観測とEOサンプリングのシングルショット化、及びテラヘルツパルスによる試料の計測の予備試験を行っていく予定である。タンパク質計測に関しても、ヒト血清アルブミン水溶液やバッファーであるリン酸カリウム水溶液等のテラヘルツ分光計測を溶質濃度を変化させつつ、金属イオンを添加した場合の吸収濃度変化の測定等を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計測データの安定化のためには、加速器等に起因するバックグラウンド等の除去が不十分である可能性が見込まれたため、更に精度の高い検討によるサンプルセルの設計が必要となったため。テラヘルツパルスの高強度ピーク出力もしくは、加速器からのバックグラウンドに起因する検波器の多頻度故障に対して、更なる精度の高い検討が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
水和タンパク質の高精度なTHz吸収計測のためには、加速器等に起因するバックグラウンド除去と検出器のサージ対策が必須であり、特にサンプルセルの設計、制御が鍵となる。開発したサンプルセルの制御系をブラッシュアップすることで、計測精度の向上を行っていく。同時に、各種計測結果におけるタンパク質の水和状態の解析を進めていく。
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